会えたらお礼がしたいという伝言は聞いていたものの、母親は私と沖田さんを交互に見ると何を察したのか、「お礼はまた今度にでも」と言って、男の子の手を取って去っていった。
少しの沈黙が流れた後、頷き合って私たちは再び歩き出した。
「そういえば、澪さんのその簪って……」
「これは、お雅さんからお借りしているものなんです。自分のものは未だ持ち合わせていないので」
最初は紐で適当に縛っておこうとも思ったのだけれど、お雅さんがせっかくだからと自身の余っている簪を貸してくれたのだ。
たまに簪や櫛などが売られている町からここに商人が来たり、露店で売られたりもするらしいけど、四条通や五条の方に行くと遊女たちや身分の高い方たちが買い物をしているということもあって、ここに売られるものよりかなり綺麗なものが売られているとか。
そのため、値段もここに売られているのよりも倍はするそうだ。
辺りを見回しながら歩いていると、何かをずっと考えていた沖田さんが「それなら…」と口を開いた。
「四条通の方まで行ってみますか」
「えっ!?でも、かなり歩くんじゃ……」
「問題ありませんよ。いざとなれば、澪さんを抱えて歩きますから」
沖田さんは、わざわざ私の顔を覗き込んでは悪戯な笑みを浮かべた。
原田さんや藤堂さんとは違って騒ぐ方ではないけれど、もしかしなくとも新撰組の中で一番と言っていいほどのドSなことを忘れていた。
ここではドSやドMなどの言葉は通じないだろうからあえて言わないけれど、新撰組の皆はかなり子どもっぽいところがある。
本当に、ザ・男子というか。
その男子から隊士になる瞬間は、皆驚くほどに格好よくなるから本当に狡い。
だからこそ、私が彼ら新選組の弱点になっていないかと考えるときがある。
私が足を止めると、それに気づいた沖田さんも数歩先で足を止め、振り返る。
「沖田さん、あの……」
「……少し、休みましょうか」
言いかけたところで、沖田さんは私の前を横切り歩いていく。
慌てて後を追いかけると、そこは私がこの今日で初めて目を覚ました路地だった。
