初めての恋は、時代を越えたあなたと。


「そうだ、澪さん」



沖田さんが何かを思い出しかのように話しかけてきた。



「私、明日非番なんです」

「そうなんですか?」

「ええ。なので、一緒に出掛けませんか?」

「えっ?」



突然の言葉に耳を疑い、思わず聞き返す。

後ろで永倉さんが「おっ」と面白そうに声を漏らすも、沖田さんはそれを気にする素振りも見せずに話を続けた。



「ずっと屯所というのも息が詰まるでしょうし、せっかくの休日もあんなことになってしまいましたから」



沖田さんは、眉を下げながら私の腕を見た。

あの日のことを言っているということはすぐに察しがついたし、その言葉でここにいる皆の空気も静かになり、その間を春の風が優しく通り抜けていく。

確かに、あの日以来買い出し以外で屯所からは出ていない。

自分も知らないところで、屯所から出るのが怖くなっていたのかもしれない。

目を覚ました直後、原田さんから「あの浪士たちは牢屋にいるから、長州はもううろついていないだろう」ということを聞いた。

八月十八日の政変で、長州藩勢力は京から追放されたということも教えてくれた。

芹沢さん粛清の一ヶ月前の文久三年八月十八日、会津藩や薩摩藩など幕府への攘夷委任を支持する勢力が、上位戦争を企てる尊攘派とその背後にいた長州藩勢力を朝廷から排除したクーデターが起きた。

それが、八月十八日の政変だ。

京はその頃から、不穏な渦に包まれていたらしい。

その名前は新選組について調べているときに見かけたけど、詳しいことまでは知らなかった。

隊士の人たちに聞いても、「あまり関わらない方がいい」と止められた。

けれど、藤堂さんは「俺が言ったってことは秘密だからな?」と言いながら、この幕末での出来事をいろいろ教えてくれる。

最初バレた時は土方さんにすごく怒られていたし、沖田さんからも私を巻き込まないようにと注意されていた。

それでも藤堂さんは事あるごとに教えてくれていたので、いつしか私が何かを知っていると「平助が話したんだろう」という空気ができていた。



「澪さん?」



沖田さんの声で、ハッと我に返る。



「あっ、えっと……お雅さんに聞いてみないと」

「それなら心配ない」



誘いはもちろん嬉しいし、沖田さんと一緒なら大丈夫という安心感がなぜかすごくある。

一応お雅さんの許可をもらわないとと思っていると、後ろから声が飛んできた。

振り返ると、執務終わりであろう近藤さんと土方さんがこちらに歩いてきていた。

久々に見ても近藤さんの笑顔は、安心感がある。