初めての恋は、時代を越えたあなたと。


「私、好きなんです」

「えっ?」



永倉さんと山南さんが同時に声を出す。

その反応に微笑みながら、青く澄んだ空を見上げる。



「皆さんの稽古中に聞こえてくる、沖田さんの"刀で斬るな!体で斬れ!"って言葉」



沖田さんについて調べていた時に、「刀で斬るな!身体で斬れ!」と隊士達に教えていて、それは局長の近藤さんより恐ろしかったと書かれていた。

普段穏やかで優しい沖田さんが、稽古中の時はすごく真剣な顔で隊士の人たちに教えている。

私の父親も稽古になると人が変わるように厳しくなるが、幼い頃から稽古面で厳しくされてきた私にはもう慣れたものだった。

父親のように強くなりたいというのが目標だったけれど、今はここにいる人たちに私の剣を認めてもらいたいという思いが強くある。

かと言って、沖田さんと手合わせをした日から竹刀すら握る暇もなく、その上あんなことがあっては握らせてすらもらえないだろう。

彼らの真剣な姿を見ているからこそ、この時代では気の一つも抜かしてはいられないのだという気持ちになる。



「稽古したいなぁ……」



自分の両手を見ながら小さく呟く。

脇差ではあったけれど、それでも真剣を握ったことに変わりはなく、思い出すだけでも手が震える。

包丁を握るのとはまた違った感覚で、もしあの時山南さんたちが来てくれなかったら、私はちゃんとあの親子を守れていたのだろうか。

あれは私が狙いだったから良かったものの、もしもあの親子に怪我の一つや二つがあれば、私は自分を責めていたかもしれない。

守る側も守られる側も安心できるようにしないと、本当の意味で守ったとは言えない。

私は、ここでの経験を現代に活かしたい。

だから、素振りをしたり稽古をつけてもらいたいのだけれど、おそらく許可は降りないだろう。



「澪が剣術の心得はあることは知ってっけど、なんせあれがあった後だからなぁ。俺たちはいいとしても…」

「沖田君は、止めたがるでしょうね」



沖田さんが私のことを心配してくれているのは、充分に伝わっている。

過保護と思えてしまうくらいに心配してくれていて、時々稽古以外の時の父親の姿と重なる時があり、胸の奥が寂しさと温かさに包まれる。



「まぁ沖田だけでなく、ここにいる隊士は皆澪に感謝しているし、大切に思っている」

「そうですねぇ。澪さんの順応性の高さもありますが、貴女が傷つけられてキレるほどには、皆さん貴女のことが大切なのです」



永倉さんと山南さんを交互に見ると、二人ともすごく優しい顔をしていた。

私は、自己肯定感がさほど高くない。

だからこそ、本当にここにいていいのか、私の存在が彼らの負担になっていないかという不安が時折波寄せてくる。

この言葉を聞いて安心こそすれ、この平和な時間を当たり前と思ってはいけない。