「休憩ですか?」
「山南さん」
声をかけられ振り返ると、今日は非番なのかラフな姿の山南さんが私の横に腰を下ろした。
普段温和な山南さんでさえ、あの日は私を支える手に少し力が入っていた。
私に気を使っているのか、あの日のことは誰も口にはしていない。
あの後、親子は無事に帰れたのかとか、隊士の皆の表情はどんな感じだったのか、浪士達はどうなったのか。
聞こうとすると遮られ、誰も教えてくれず、いつからかどうやって聞けばいいのかすら分からなくなっていた。
どうしたものかと考えながら、空を見上げる山南さんの横顔を見つめる。
「あの日のこと、知りたいんですよね?」
「……えっ」
山南さんは空から視線を外さず、静かに話し始めた。
「隊長会議で出ていますから。貴女があの日のことを知りたがっていると。……ですが、思い出させてしまっては、貴女を怖がらせてしまうんじゃないかということで、誰も口にはしなかったんです」
やっぱりそうだったんだ。確かに、斬られたところはすごく痛かったし、今思い出すだけでも手が少し震えるくらいだ。
向こうではこういう事態にそうそう出くわすことはないし、出くわしたとしても相手はナイフを持っているだけ。
ここでは刀や十手の携帯をしている人を普通に見かけるが、向こうだと所持するだけで銃刀法違反という名目で捕まってしまう。
自分が意識を失っては元も子もないが、それでもあの親子を巻き添えにするのだけは許せなかった。
だから浪士達に対抗した迄なのだが、帰って周りの人達を心配に晒してしまった。
「貴女が助けた親子は無事でした。母親の方は腕を強く掴まれたようで多少の痛みはあったようですが、子ども含め目立つ傷はありませんでした」
「そうですか……良かった」
それが聞けただけでも、すごく安心する。
私が意識を失っている間、何度もお見舞いに来ていてくれたらしい。
ここに来るだけですごく勇気がいるし怖かったはずなのに、お見舞いに来てくれたと知れたことが凄く嬉しい。
