「あなた方の所属と名前は?この騒動を起こした目的は何です?」
山南さんの浪士達に問う声が聞こえるも、浪士たちの声は聞こえず、口を裂けても話さないつもりなのだろう。
だから私が伝えなければならないのに、呼吸が浅く、思うように声が出ない。
それでも、京の治安を守る彼ら新選組の力になれるのなら、たとえ意識がなくなろうとも力になりたい。
「ぁ……」
「っ!山南さん、嬢ちゃんが何か言ってるぞ!」
原田さんと沖田さんが交代し、私は沖田さんに支えられて上体を起こしているのがやっとと言っていいほど、斬られた箇所の力が無くなってきている。
片腕だけで上体を支えるのは、さすがに限度がある。
浪士たちを抑えている藤堂さんと永倉さんも、目線だけは私に向いているのを確認して、声を絞り出して音にする。
「彼ら、は…長州藩士……。髙市安志、片桐恒一……そう、言ってた…」
「長州藩士ですか。長州藩勢力は京を追放されたはずですが」
「まだ残っていやがったのか」
入らない力で、ゆっくりと頷く。
「目的、は……私、です……」
その言葉に、私の周りだけ空気が冷たくなるのをうっすらと感じた。
それでも、意識が完全に飛ぶ前に知っていることは全て山南さんたちに伝えないといけないという気がしてならなかった。
「私を見かけて……確かめる、為……親子に絡んだ……。予想通り私で……髙市が、すべて…予定通り……だと、言ってました……」
「……テメェら」
近くで静かに、かつ低い声が響いた。
「嬢ちゃんに、何するつもりだった」
原田さんが拳を強く握り、静かなトーンで浪士達に問い始める。
けれども浪士達は反省どころか開き直り、質問に対して鼻で笑った。
「幕府の犬の小屋に女が出入りしているって噂が流れてる。お前らを嫌ってるのは町民だけじゃないんでね!」
「そいつを狙った理由はただ一つ。そいつを攫えば、お前ら新選組を釣れると思ったからだよ」
と言いながら、声を出して嘲笑した。
攫うという単語が聞こえた瞬間、私の周りだけ空気が冷たくなるのを感じた。
すると、沖田さんが静かに立ち上がり、私を山南さんに預けて浪士たちへの元へ向かった。
止めたくても、もう声が出ないため止めることができず、殆ど開いていない目で沖田さんの背中を見守ることしかできない。
藤堂さんや永倉さんが止めるも、沖田さんはそれを無視して刀に手をかけ、再び浪士たちの前に立った。
「確かに、彼女を攫えば新選組は釣れるでしょう」
「だろう?」
「ですが、それは死を意味するのと同じこと。覚悟は、当然できていますよね?」
沖田さんのダダ漏れな殺気に当てられたのか、さっきまで嘲笑していた浪士たちが怯えている。
「澪さん……?澪さん!!」
「澪さ……!!」
私はその浪士たちの姿と山南さん沖田さんの声を最後に、意識を完全に飛ばしてしまった。
この時の私たちはまだ知らなかった。
この些細な出来事が、今後の新選組を大きく揺るがす"あの事件"に繋がっていることを。
