【沖田side】
「山崎の話だと、近頃は壬生周辺だけでなく、三条の方にも見たことのない顔が歩いているそうだ」
土方さんの低くて静かな声が部屋に響く。
京に来た頃に比べると、少しずつではあるが浪士たちの動きも活発になりつつあり、町人たちの間でも不安な声が増えているのは見回りで把握していた。
それでも確かな情報がない限り、見回り以外での行動はできない。
全員が土方さんの話を真剣に聞く中で、私はずっと嫌な予感が消えなかった。
「総司、どうかしたか」
顔に出ていたのか、近藤さんの言葉に全員が私の顔を見る。
お得意の笑みを浮かべて否定すると、近藤さんは「そうか」とだけ言い残し、話に戻った。
理由は分からないけれど、山南さんに呼ばれて澪さんを一人で部屋に返したあの時から、ずっと胸がざわついて仕方がない。
そんな時、外から二つの慌ただしい足音が聞こえてきた。
「総司いる!?!」
足音が止まったかと思えば、次は宗太君の大きな声が響いた。
その声に部屋全体の空気が一瞬重くなり、土方さんは眉を顰めて「何だ?」と言いながら立ち上がり、それにつられて全員が立ち上がる。
縁側を歩いたり部屋を抜けたりして、宗太君の声がする方に近藤さん含む副長隊長の全員で向かう。
「沖田さんなら大事な――――」
「どうした?」
土方さんが声をかけると、二人は青白い顔をしていて、今にも泣きだしそうなくらい震えていた。
「あっ、あの……あの……」
「宗太、弥吉」
震える子どもたちを見兼ねて、平助が軽い足取りで庭に出て二人の肩に手を置く。
平助が頷くと、子どもたちは涙を拭いて平助と私を交互に見た。
「落ち着け。何があった?」
涙を拭いたものの、二人の目からはすぐに涙が溢れ始める。
「……僕たち、澪さんとお出かけしていて」
「澪と?」
頷く宗太君を見た後にそれぞれ周りを見渡すが、澪さんの姿は見当たらない。
それが、私の嫌な予感を大きく膨らませた。
「町で僕たちと同じくらいの子を連れた女の人が、刀を持った男の人に絡まれてて……」
「みお、隊長さんたちにはないしょだって……!とくに総司には……」
宗太君たちが何を言いたいのかは大体想像がついた。
それは皆も同じらしく、全員が私の方を向いた。
「澪さん、近くにいた人に短い刀を借りて戦ってて……!だけど相手は二人で……」
「みお、うでを斬られてた……!」
「はっ?」
私より真っ先に反応したのは左之さんだった。
だけど私も、腕を切られたという言葉を聞いたときに、膨らみ切った嫌な予感が弾ける音がした。
澪さんは熱で倒れて間もないというのに、次は刀を持った男に斬られたときた。
彼女はどうしてこんなにも、私の心を取り乱させるのがうまいのだろうか。
一度我を失ったことがあり、それ以降は誰も踏み込ませないように近藤さん以外には一線を引いていた。
別に踏み込まれているわけでもいないのに、彼女の仕事に対するひたむきさや瞳を見ていると、その一線さえ自分から超えたしまいたくなる時がある。
「平助、二人を頼みます」
「おい、総司!!」
私は平助君に声をかけ、土方さんの静止も聞かずに走り出した。
「山崎の話だと、近頃は壬生周辺だけでなく、三条の方にも見たことのない顔が歩いているそうだ」
土方さんの低くて静かな声が部屋に響く。
京に来た頃に比べると、少しずつではあるが浪士たちの動きも活発になりつつあり、町人たちの間でも不安な声が増えているのは見回りで把握していた。
それでも確かな情報がない限り、見回り以外での行動はできない。
全員が土方さんの話を真剣に聞く中で、私はずっと嫌な予感が消えなかった。
「総司、どうかしたか」
顔に出ていたのか、近藤さんの言葉に全員が私の顔を見る。
お得意の笑みを浮かべて否定すると、近藤さんは「そうか」とだけ言い残し、話に戻った。
理由は分からないけれど、山南さんに呼ばれて澪さんを一人で部屋に返したあの時から、ずっと胸がざわついて仕方がない。
そんな時、外から二つの慌ただしい足音が聞こえてきた。
「総司いる!?!」
足音が止まったかと思えば、次は宗太君の大きな声が響いた。
その声に部屋全体の空気が一瞬重くなり、土方さんは眉を顰めて「何だ?」と言いながら立ち上がり、それにつられて全員が立ち上がる。
縁側を歩いたり部屋を抜けたりして、宗太君の声がする方に近藤さん含む副長隊長の全員で向かう。
「沖田さんなら大事な――――」
「どうした?」
土方さんが声をかけると、二人は青白い顔をしていて、今にも泣きだしそうなくらい震えていた。
「あっ、あの……あの……」
「宗太、弥吉」
震える子どもたちを見兼ねて、平助が軽い足取りで庭に出て二人の肩に手を置く。
平助が頷くと、子どもたちは涙を拭いて平助と私を交互に見た。
「落ち着け。何があった?」
涙を拭いたものの、二人の目からはすぐに涙が溢れ始める。
「……僕たち、澪さんとお出かけしていて」
「澪と?」
頷く宗太君を見た後にそれぞれ周りを見渡すが、澪さんの姿は見当たらない。
それが、私の嫌な予感を大きく膨らませた。
「町で僕たちと同じくらいの子を連れた女の人が、刀を持った男の人に絡まれてて……」
「みお、隊長さんたちにはないしょだって……!とくに総司には……」
宗太君たちが何を言いたいのかは大体想像がついた。
それは皆も同じらしく、全員が私の方を向いた。
「澪さん、近くにいた人に短い刀を借りて戦ってて……!だけど相手は二人で……」
「みお、うでを斬られてた……!」
「はっ?」
私より真っ先に反応したのは左之さんだった。
だけど私も、腕を切られたという言葉を聞いたときに、膨らみ切った嫌な予感が弾ける音がした。
澪さんは熱で倒れて間もないというのに、次は刀を持った男に斬られたときた。
彼女はどうしてこんなにも、私の心を取り乱させるのがうまいのだろうか。
一度我を失ったことがあり、それ以降は誰も踏み込ませないように近藤さん以外には一線を引いていた。
別に踏み込まれているわけでもいないのに、彼女の仕事に対するひたむきさや瞳を見ていると、その一線さえ自分から超えたしまいたくなる時がある。
「平助、二人を頼みます」
「おい、総司!!」
私は平助君に声をかけ、土方さんの静止も聞かずに走り出した。
