周りの声に気を取られていると、浪士の一人がすぐ目の前まで来ていて反射的に脇差を構えると、金属同士が当たる高くて鈍い音が町中に響いた。
真剣なだけあり、手を抜いていたとはいえ沖田さんから受けた衝動よりもはるかに重く、手から流れるように腕が痺れ始める。
竹刀とは比べ物にならず、自分がどれだけ危ない時代にタイムスリップしたかを今一度再認識させられる。
腕の力は男相手に敵うはずもなく、徐々に押されているのが分かる。
男の後ろを見れば、宗太君と弥吉君が不安そうな顔でこちらを見ていた。
「余所見とは余裕だな!」
目の前の浪士に集中しすぎたせいで、もう一人の存在を忘れていた。
その声と共に浪士は刀を振り下ろし、私は勢いよく右に飛ぶも刀が当たり、血が着物の色を染めていく。
「澪さん……!!」
「みお!!」
二人が前に出ようとするも、私が脇差を借りた男の人に止められている。
痛いけどまだ動く左腕を動かして、もう一度脇差を握りしめる。
「ちょ、君……!」
「あにさま……!」
宗太君たちがいる方向から声が聞こえて向くと、宗太君が屯所に向かって走り出していた。それを追いかけるように、弥吉君も走り出す。
やっぱり内緒にするのは無理だったかと、心の中で苦笑する。
考えてみればすぐに分かることだった。
あんな幼い子たちに事態を内緒にさせるなんてどうかしている。
それなのになぜか、走り去る小さな背中を見て、自分が正しいと思う行動を取った宗太君を誇らしいと思ってしまう。
「だから余所見は……!」
彼らが来てくれるのなら、今この状況で私ができることはただ一つしかない。
「あなた方の名前は?」
そう聞くと浪士は鼻を鳴らした。
「長州藩士、髙市安志だ」
「同じく長州藩士、片桐亘一」
どうやら、この長州藩士の髙市と片桐と名乗る浪士たちの狙いは私らしい。
彼らが来るまでこの二人を私だけに集中させて、あの親子や周りの人たちに危害を及ばせないことが、今の私にできることだ。
