「沖田君にも困ったものですね」
縁側に立ったまま沖田さんたちを眺めていると、山南さんが困った笑みを浮かべながら歩いてきた。
その後ろには井上さんもいて、山南さんの言葉に首を縦に振っている。
「沖田君、土方君が呼んでいますよ。皆さんも」
山南さんの呼びかけにより、和やかな空気が一変した。
沖田さんはつい先ほど土方さんに会っていたのにと思いながら、皆の顔を見渡す。
まだまだ知らないことは沢山あるけれど、副長の土方さんが呼んでいるということは、何かあるのだろう。
ここは幕末で、現代と違って毎日が平和なわけがない。
現代も平和は平和だけれど、遠いところでは尊き命が亡くなっている。
現に、さっきは困った笑みを浮かべていた山南さんも静かな表情に戻っている。
確証は無いけれど、近々大きなことが起きるという嫌な予感が胸を締め付ける。
気づけば私は、通り過ぎようとする沖田さんの裾を掴んでいた。
「澪さん?」
「……あっ。すみません……」
沖田さんの声で我に返り、咄嗟に裾を掴んでいた手を離す。
未来から来たなんてことは絶対に言えないし、かと言って何かが起こるなんて言っても、誰も信じないだろう。
なんとも言えないこの気持ちが、嫌な予感をより一層膨らませる。
下を向いていると、「澪さん」と呼ぶ優しい声と共に大きな手が頭に降って来た。
「澪さんは病み上がりなんですから、部屋で休んでいてください」
「でも……。……分かりました」
理由は分からないけれど、いつも通りの優しい声なのに、今は何故だかそれが妙に遠く感じた。
土方さんが呼んでいるのだからこれ以上引き止めては行けないと思い、皆に会釈をして部屋に向かった。
