「しかしまぁ、総司がここまで誰かを構うとはな!」
原田さんは笑いながら、木刀を持って立ち上がる。
私からしてみれば、沖田さんはおそらく子どもが好きで、宗太君や弥吉君たちとよく遊んでいる。
二人だけでなく、遊びに来る子どもたちとも暇あれば遊んでいるのをよく目にする。
そこに私も時々混ざっているから、その延長にしか過ぎないと思っているのだけれど、違うのだろうか。
「ほんとほんと。昔から誰も踏み込ませない感じだったのにさぁ、澪が来てからというもの──」
藤堂さんが話している途中にもかかわらず、沖田さんは一歩ずつ前に進んでいく。
それを見て慌ててついて行くが、藤堂さんは気づいていない。
原田さんと斎藤さんはさすがに気づき、目線を逸らす。
それに藤堂さんが気づいた頃には、沖田さんは藤堂さんの真後ろに立っていた。
「平助?」
沖田さんの後ろにいるから顔は見えないけれど、いつもと変わらない声なのに、何故か藤堂さんの肩が跳ねた。
「いや、えっと………すみません」
「素直でよろしい」
さっきまで楽な体勢で楽しそうに笑っていた藤堂さんが、一瞬で姿勢を正す。
原田さんと斎藤さんは、同時に視線を逸らした。
一歩ずつゆっくりと進んでいく沖田さんを見て、藤堂さんは頬を引き攣らせながら後退りをする。
見えていなくても、沖田さんがどんな表情をしているのか何となく分かってしまうことに、少しだけむず痒しさを感じてしまう。
原田さんの言う通り、確かに最近沖田さんと一緒にいることが増えたと思うし、それは自分でも気づいている。
だけど、一緒にいると言っても、宗太君と弥吉君と遊ぶときや、たまたま縁側で会った時に話をしているだけで、一緒に居ようと話し合っているわけではない。
仮にここで誰かに恋をしたとしても、私は彼らの結末を虫かじり程度には知っている。
だから、想いを伝えて歴史を変えることなどはしてはいけないのだ。
誰かを好きになったことのない私が、ここにいる誰かを好きになるなんてありえない話だけど。
でも、どうしてだろう。芹沢さんの粛清のあの日、芹沢さんが亡くなったことよりも、沖田さんが生きていたことにひどく安心してしまったのは。
沖田さんは少し意地悪で、何を考えているか分からないときの方が多いし、だけどすごく優しくしてくれる。
全てを見透かされてるように感じるときもあるけれど、優しいからこそ心配をかけたくないと、ついつい気を張ってしまう。
おそらく、それも全て見透かされているだろうけど。
