「内容は、私に預けられた伝言と同じことが書かれています」
「伝言、だと…?」
「はい。"これから新撰組は大きくなる。その頭になる自覚を持て。そして、それをお前らが支えろ。俺みたいな悪を、決して許すな"そう、仰っていました」
言い終わると同時に、私は不思議と達成感を感じ、心の中で芹沢さんに伝えたことを報告した。
どんな顔で見守っているかは分からないけれど、相変わらずタバコとお酒に塗れているんだろうなぁ。
そんな私の穏やかな気持ちとは反対に、この部屋の空気は張り詰めたままだ。
まあ、そんな空気を作ってしまったのは私だけど。
「文にも同じことが書かれている……」
近藤さん土方さん沖田さんが、驚いた顔でこちらを見る。
無理もない。
あの芹沢さんが伝言、ましてや文を残すなんて今までなかったのだろう。
私も、まさか文と伝言を預かることになるとは思ってもいなかった。
私が武士を語れるわけなんてないけど、あの時の芹沢さんの目は間違いなく武士の目をしていた。
初めて会った時はすごく怖い印象だったから、真っ直ぐなあの目を見た時は拍子抜けだった。
だからこそ、伝えなければいけないと決心したのだ。
「生前……と言ったな。芹沢先生とはいつ?」
「芹沢さんが粛清される日の昼時です。偶然にも町でお会いしまして、お茶をした時に」
「そうか……」
近藤さんは、優しい手つきで文を閉じて包み直し、そっと箱の中へ戻した。
「芹沢さんが文を書かれたのは、私が伝言を伝えたところで、本当に芹沢さんが言ったのかどうか信じないだろうからとの事でした」
「……敵わんな、芹沢先生には」
「ですね」
近藤さんは優しく笑い、「ありがとう。この事は他の隊士には俺から話そう」と言ってくれた。
張り詰めた空気が、約一名を除いて段々と解けていく感じがした。
