初めての恋は、時代を越えたあなたと。


目が覚めると、この数ヶ月の間で慣れた固めの布団の上にいた。

ゆっくりと体を起こし、辺りを見渡す。

全てが木と畳でできた部屋で、扉ではなく障子という光景に、さっきのは夢だったのかと肩を落とす。

でも、自分の部屋の布団の感触に違和感を覚えるあたり、私はここが好きになっているのかもしれない。



「澪さん、沖田です。入りますね」



障子の向こうから沖田さんの声がして、答える間もなく障子が静かに開く。



「目が覚めたのですね。おはようございます」

「おはよう、ございます」



いつもと変わらない優しい声と、優しい笑顔。

あんなに雨に打たれたというのに風邪をひいてないなんて、ここの人たちは頑丈というかなんというか。

雨で思い出した。

芹沢さんから預かった文はどうなったのだろう。

濡れないように布で包んで、胸元に隠れるように入れたのだけれど、傘を差していなかったから濡れているかもしれない。



「安心してください」



私の考えていることが読めたのか、沖田さんはそう声をかけてきた。



「貴女の胸元に入っていた包みは、箱に入れて保管してあります」



その言葉に、胸を撫で下ろす。

沖田さんは続けて、「大事そうに持っていたので」と言った。



「あの、沖田さん。あの後は、どうなったんですか?」



私の言葉に、沖田さんはお茶を注ぐ手を止めた。

しばらく固まったあと、沖田さんは私の方を向いた。



「やっぱり、覚えていないんですね」

「覚えていないって?」

「……あの夜、貴女を抱きしめた時、雨が降っているにもかかわらず貴女の体が熱かった。そこで、熱があることに気づいたんです」



私、熱あったんだ……。

怠さとか体調の変化とかは特に感じなかったし、ちょうどお風呂上がりだったから、体が火照って熱いだけかと思っていた。

熱が出ていたことにも気が付かなかったなんて、どれだけ自分のことが見えていなかったのだろう。

というか、抱きしめられた所までは覚えているけど、いざ口に出されるとすごく恥ずかしくなってくる。

熱を出していたってことは、どれくらい眠っていたのだろうか。



「あの…私、どれくらい眠ってました?」

「昨日丸一日は寝ていましたよ」



沖田さんは「はい」と、湯呑みに入った温かいお茶を渡してくれた。

一口啜っただけで、身体の中が温かくなっていくのが分かる。