芹沢の粛清は苦戦しながらも、何とか事を終えた。
あんなに酒を飲んでいたにもかかわらず、ここまで戦えるとは思わなかった。
さすが、筆頭局長を務めていただけの腕はある。
愛妾のお梅殿も、ここに居なければもっと長生きができたに違いない。
「……運べ」
土方さんの低い声が、静かな部屋に響く。
土方さんの指示で、芹沢とお梅殿の遺体は血まみれの布団に包まれ、隊士たちに運び出されていく。
いつからか降りだしていた雨音と濡れた地面を踏む足音が響く中、向かいの家の門が開く音が微かに聞こえた。
「おっと……。参りましたね、これは」
「どうした?総司」
その足音の持ち主は見に行かなくても分かる。
貴女は、いつもそうだったから。
怖いと思う時ほど、彼女は震えながらも前を向いて進む人だ。
ここに来てしまったのだって、彼女にとって必要なことなのだろう。
まだ数ヶ月しか一緒にいないというのに、彼女の順応性が高いおかげで、私だけでなく他の隊士の方たちも、長いこと彼女と一緒にいるような気がしてならない。
「すみませんが、土方さん。ここはお任せしてもよろしいでしょうか?」
「どこに行く」
「少々、猫の相手をしてきます」
「猫?」
言葉の意味が分からない左之さんとは反対に、猫という言葉ですべてを理解した様子の土方さんは舌打ちをした。
そのあと、溜息をついて「行ってこい」という一言をくれた。
軽く頭を下げ、門の外へと向かった。
門を抜けると、案の定澪さんが傘も差さずに立っていた。
後ろには、止めに来たであろう永倉さんと斎藤さんが立っているが、澪さんはそれを無視するかのようにこちらに向かって真っ直ぐ歩いてくる。
その姿が何故か、どうしようもなく愛おしいと思ってしまった。
「……傘を差さないと、風邪をひきますよ」
