「澪さん、待ってください」
人込みを避けるように端の方を歩いていると、後ろから肩を掴まれ、止められた。
振り返ると、沖田さんは小さく咳込んだ。
「……大丈夫ですか?」
「はい。少し走りすぎただけです」
沖田さんが歩き始めるのを見て、それに合わせて私も歩き始める。
今思えば、隣を歩くのはこれが初めてかもしれない。
初めて会った時は、沖田さんと土方さんの後ろを歩いていたし、私が飛び出した日の帰りも、私は沖田さんの少し後ろを歩いていた。
本来ならもっと早く歩けるだろうに、沖田さんは歩幅を合わせてくれている。
「それにしても、驚きました」
「えっ?」
「土方さんに反論する人なんて、隊士の中でも数名しかいませんから」
沖田さんは楽しそうに笑った。
たしかに、隊の中で土方さんに反論できるのは数名しかいない。
それも、全員が試衛館のメンバーの人達。やっぱり、付き合いというのは大切なんだ。
正直、反論するのはかなり怖かったし震えた。
普通なら斬られていても仕方の無い状況だった。
「そんな土方さんから伝言です。今夜は前川邸で寝るようにと」
「えっ、どうしてですか?」
「………その方がいいので」
珍しく、沖田さんは理由を話してくれなかった。
それどころか、どんな時も合わせてくれていた目線も、今は逸らされた。
どうしてそんな悲しそうな顔をするのかは、私には分からない。
だけど、沖田さんのそんな顔を見たくないと思う自分が、いちばん分からない。
