「では、私はこれで。ご馳走様でした」
芹沢さんに頭を下げ、八木邸へと向かって歩き出す。
芹沢さんは帰るかは分からないけど、きっと別々の方がいい。
土方さんや沖田さんに見つかりでもしたら、叱られるかもしれない。
「あー、そうだ。澪」
「はい?……!」
呼ばれて振り返ると、目の前に芹沢さんの顔があった。
「そのまま聞け」
次の瞬間、芹沢さんから聞かされた言葉に、私は反応できずに固まった。
内容は近藤さんたちへの伝言。
近藤さんたちは、私が話せば信じてくれるだろうけど、本当に芹沢さんが言ったのかという点に関しては信じはしない。
だから、顔を離す瞬間、芹沢さんは私に文を預けた。
内容は、今芹沢さんが話した内容そのままを記載しているらしい。
でもそれって、まるで───。
「……澪さん!!」
「沖田さん?……わっ!」
遠くから沖田さんの声が聞こえて、振り返ると同時に肩を強く引かれた。
体がぐらりと傾き、そのまま沖田さんの腕の中へと引き寄せれられる。
「はぁ……はぁ…。大丈夫ですか、澪さん」
「えっ?……あ、はい」
沖田さんは息遣いが荒く、走って来たということがすぐに分かる。
そんな沖田さんを見て、芹沢さんは鼻で笑った。
「どういうつもりですか、芹沢さん」
「どうもこうもねぇよ。そこで会った。そんだけだ」
芹沢さんは間違ったことは言っていない。
私は沖田さんを見て何度も頷いた。
沖田さんは息を整えるかのように大きく息を吸い、「はぁー…」と息を吐く。
こんなに焦っている沖田さんは初めて見た。
「どうして沖田さんがここに?」
「どうもこうも、奥さんからあなたが買い物行ったきり戻ってこないと聞いたので探しに来たのです。そしたら……」
その目線の先には、反対側に歩いていく芹沢さんの背中があった。
本当に何も無いのだけど、沖田さんや近藤さんや山南さんはともかく、土方さんは信じてくれなさそうだ。
というか、この事が知られれば、今度こそ私に切りかかる勢いで疑ってくるかもしれない。
「総司!…見つかったのか」
噂をすれば。
「はい。ただし、芹沢さんも一緒でした」
「……芹沢、だと?」
行き交う人々が多い中で、土方さんの鋭く冷たい視線だけが、身体に突き刺さる。
