確かに腹は立っていたけど、局長である近藤さんに謝ってもらうほどではない。
というか、私の名前が出た後に揉めそうになっていたということは言わないでおこう。
「それでだな、澪さん。少し話は逸れるんだが、聞いたところ、並の女性以上の力や体力があると見た」
聞いたところ……。
おそらく、沖田さんとの手合わせの時のことも話してしまったのだろう。
近藤さんも山南さんも、私が剣を使えるということは知っていたし、きっと土方さんも近藤さんから聞いて知っていたはずだ。
「そこで頼みたいことがある。四日後、芹沢先生たちと共に大坂に行くんだ。それについてきてほしい」
「おい、聞いているのか?」
近藤さんが何を言っているのかが分からず、固まってしまう。
そこに、土方さんの鋭い視線が声と共に刺さった。
「……聞こえています。何で、私なんですか?」
「別に戦ってほしいわけじゃない。万が一の救護要員として同行してほしいんだ。君なら自分の身は自分で守れるだろうからな」
近藤さんは「あっはっはっは!」と、楽しそうに笑った。
この人の笑顔は本当に心が温かくなる。
確かに、自分の身は自分で守れるはずだ。
男女の力量に溝があろうとも、頭を回転させて技を駆使すれば、女の私でもなんとかなるかもしれない。
でもそれは、人を傷つけるということ。
怪我などで血は見たことあるけれど、直接的な人の死は当然見たことがない。
そんな私が、一緒に行ってもいいのかという不安が、徐々に込み上げてくる。
「……すぐには決められないので、少し、お時間を頂けますか?」
「もちろんだ。無理はしなくていい」
「ありがとうございます」
話は以上と言われ、私は部屋を出た。
