さっきはどうなることかと思ったけど、勇気を出して声をかけてよかった。
沖田さんが鍔を上げた瞬間、宗太君と弥吉君は私の後ろに下がった。
あれが日常だとしても、二人はまだ子どもだから怯えて当然なのだ。
そんな子たちの前でやり合おうとするなんて、
夕餉の支度中にも関わらず、私はさっきの出来事にだんだんと腹を立てていた。
「澪ちゃん、それができたら運んでいきましょうか」
「はい」
お膳を運ぶときに一客ずつでいいと言われたけれど、並の女性より力には自信がある。
そのため、両手に二客ずつ積んで広間まで持っていく。
コの字になるようにお膳を並べていく。
土間と広間を往復していると、広間に来る隊士数名と会った。
それぞれ決まっている自分の場所に座っていく。
「おい」
全てを並べ終えて広間を出ると、後ろから声をかけられた。
振り返るといつもの不愛想な顔の土方さんと、仏の顔の近藤さんが立っていた。
その後ろには山南さんと、バツが悪そうな顔をした藤堂さんと原田さん。
そして、読めない笑みを浮かべる沖田さんがいた。
「後でお前に話がある。近藤さんの部屋まで来い」
いきなり命令口調?そんな口の利き方で誰が行くか!
なんて、心の中で反論しながらも、今の女中の立場からそういうことは言えない。
「そんな口の利き方じゃダメですよ、土方君」
「あぁ?」
最初はこの返事にでさえ肩を震わせていたけど、今では驚きも怖がりもしない。
強いて言うなら、数週間しか経っていないのに、ここに慣れてしまっている自分が一番怖い。
「先ほどの中庭の件ともう一つお話がありまして。お仕事が終わってからで構いませんので、少しお時間いただけますか?」
「そういう事でしたら……分かりました」
「ありがとうございます」
「では、失礼します」
会釈をして、近藤さんたちに背を向けて歩く。
山南さんの言っていた中庭の件って、私が剣を扱えることについての話なのだろうか。
兎にも角にも、早く夕餉を済ませて仕事を終わらせよう。
