巻き込まれては危ないからと、宗太君と弥吉君は大人しく藤堂さんの隣に座る。
庭に立つ私と沖田さんの間を、風が通り抜ける。
こうして、沖田さんに切っ先を向けるのは初めてだ。
竹刀の剣先を向けた時はあったけど、あの時はこの人があの沖田総司だなんて知らなかった。
知って尚、いざ切っ先を向けるとなると、少し怖気付いてしまう。
調べたらネットに、沖田さんが本気を出したら近藤さんでさえ敵わないだろうと書かれていた。
だけど、さすがの沖田さんも女中相手に本気では来ないだろう。
「どうしました?いつでもどうぞ」
でも、その余裕そうな顔を、少しばかり驚かせたいと思ってしまった。
「……いきます」
深呼吸をして、すり足で右足を半歩出す。
その直後、大きくかつ力強く一歩を踏み出した。
だが、次の瞬間、打ち込んだはずの一撃はいとも簡単にいなされた。
「踏み込みは良かったですが、少し大振りですね」
振り返ると、木刀の切っ先が喉元にあり、ゆっくりと息を呑む。
私が体勢を崩したときには、既に間合いを詰められていたんだ。
──速い。
分かっていたはずなのに、その速さは想像を遥かに超えていた。
これで手を抜いているということは、沖田さんが本気を出したら、もっと速いということになる。
体制を整えて、もう一度木刀を構える。
「お、なんか面白れぇことやってんじゃん」
息を吐くと同時に、原田さんの声が聞こえてきた。
「左之助さん。澪が宗太たちと斬り合いごっこで遊んでいたら、総司がいきなり澪に木刀渡してさぁ。澪も多少は剣術の心得があるみたいで。んで、今から二回戦目」
「へぇー」
興味が湧いたのか、原田さんも縁側に腰を下ろした。
あまり多くの人に、私が剣術を使えるというのは知られたくないのだけど、こればかりは仕方がない。
興味を持たれるほど強くはない。現に、さっきは簡単にいなされてしまった。
目を閉じてゆっくり深呼吸をし、ゆっくりと目を開ける。
じっくり相手を見て観察し、一瞬の隙を逃さないように踏み込む。
木刀の高くて乾いた音が庭に響く。
手応えは感じたものの、次の瞬間には木刀を落とされた。
「惜しい」
その声はいつもの優しい声だけど、どこか楽しそうに聞こえた。
