「何して遊ぶ?」
「これ!剣ごっこ!」
弥吉君は木の枝を拾うと、私と宗太君に渡してくれた。
弥吉君の年の頃には、既に竹刀を握って稽古をしていて、それが何だかすごく懐かしく感じる。
「おれは超つよいんだからな!」
「では弥吉殿、宗太殿。いざ尋常に」
雰囲気を出すため、母親がよく見ていた時代劇の役者のモノマネをしてみる。
それが刺さったのか、弥吉君だけでなく宗太君も嬉しそうに木の枝を構え始めた。
「えいっ!」
「ここだ!」
容赦ない二人の力に対して、少し力を籠める。
剣道の稽古で習った動きしかできないけれど、子ども相手にはそれぐらいがちょうどいいのかもしれない。
かといって子ども相手でまだ幼い子たちなので、本気を出さずやられたふりをする。
「やられたー」
「みおの首、打ちとったりー!」
ハイタッチをする宗太君と弥吉君。
その姿を見て、さっきのことが嘘かのように温かい気持ちに包まれる。
本気の試合なら、どれだけ強い相手でも手は抜かない。
けれど、子どもたち相手に遊ぶのも新鮮でなんだか楽しい。
宗太君ぐらいの年の子は道場にたくさんいたけれど、道場仲間という認識で、こうして遊ぶことはなかった。
自分が子どものお世話に向いてるなんて、今まで思いもしなかったな。
「澪さん」
呼ばれて振り返ると、目の前に木刀が飛んできた。
思わず掴むと、沖田さんが立ち上がって庭に降りてきた。
初めて持つ木刀の感触に、思わず固まってしまう。
「どこか動き足りなさそうだったので、一手お願いできますか?」
「……えっ?お、沖田さんと…ですか?」
「私では不服ですか?」
「いえ……!そうではなくて、その──」
不服どころか願ってもいなかったこの状況に、うまく言葉が出てこない。
天才剣士と言われている沖田さんと手合わせなんて、適うはずなんてないのに。
いつか、叶うのなら沖田さんと一手手合わせがしたいと、沖田さんについて調べている時に考えていた。
それが、こんな状態で叶ってしまうなんて、幸運なのか不運なのかは分からない。
気づけば私は、襷掛けの紐を縛り直して、木刀を構えていた。
