「さて、本題に入りたいところだが……歳。お前は退席しろ」
「あ?なぜだ」
「お前が居ては、彼女は怯えて何も話せんだろうからな。大丈夫だ、報告はちゃんとする」
確かに、土方さんがいると体が固まり、言葉も詰まってしまう。ただでさえ、目の前には局長の近藤さんがいるのだから。
近藤さんのその提案に、山南さんと沖田さんも賛同した。
土方さんは私を睨んだが、局長の命令には逆らえないらしく、舌打ちをして部屋を退室した。
障子が荒く閉まる音が、室内に響く。
この部屋に入ってきたときの私の様子を察知したのかは分からない。
だけど、その配慮と優しさは、さすがは局長といったところなのだろうか。
少し安心した私は、小さく息を吐いた。
「澪さん、と言うそうだね。歳と総司から話は聞いているよ」
「……はい。一之瀬 澪と申します」
少し安心しただけで緊張は解けておらず、震える口で名前を名乗り、頭を下げる。
「顔を上げておくれ」
近藤さんのその言葉に、恐る恐る頭を上げる。
すると近藤さんは、親が子を見守るような優しい顔をしていた。
「まず、どこから来たか聞いてもいいかな?」
「……江戸、です」
嘘はついていない。江戸は、現代で言う東京だ。
東京で生まれ育ったのだから、江戸という答えは間違ってはいないはず。
三人は顔を見合わせて何か言いたそうだったが、何も聞かれなかった。
「総司から聞いたのだが、剣術の心得があるのだとか」
「……嗜む程度、ですけど…」
女性で幼い頃から道場で思い切り稽古をしていたなんて知られると、ただでは帰してはもらえないだろう。
この時代に帰る場所なんてものはないが……。
「あの構え方が嗜む程度、ねぇ…」
私から見て、近藤さんの左側にいる沖田さんが小さく呟いた。
だけど、静かなこの部屋ではその小さい声でさえ、大きく聞こえてしまう。
私は沖田さんを少しばかり睨んだ。
話せる範囲には限度がある。
だから、少しでも怪しまれないように答えているのに、沖田さんはそれを崩そうとしてくる。
野良猫の下りでも感じたけど、この人は人を揶揄うのが好きなタイプに違いない。
