慣れない足取りで縁側を歩く。
庭では隊士の人たちが素振りや模擬戦をしている人たちがいた。
でも私が通ると、ほぼ全員が手を止めて私の方を見た。
刺さる視線に緊張して下を向くと、沖田さんは「大丈夫ですよ、悪い人たちじゃないですから」と、声をかけてくれた。
悪い人たちどころか、京の治安を守るために動いている人たちだ。
塚井先生の話だと、間者も数名いるらしいけど。
壬生浪士組には長州藩士が間者として数名いることと今までのことは全部、塚井先生から聞いた話だ。
あとは、近藤勇が天然理心流の四代目当主ということも聞いた。
現代にいた時にスマホでサッと目を通しただけで記憶は曖昧だが、一応彼らの今後のことも知っている。
定食屋の時みたいなミスはないように気を付けよう。
「ここです。近藤さん、総司です。連れてきました」
「おう、入れ」
沖田さんが声をかけると、中から優しそうな声が聞こえてきた。
沖田さんや土方さんと会った時とは、また違う緊張感に包まれる。
沖田さんが障子を開け、私は中へ通される。
左を見ると、相変わらず怖い顔をして座っている土方さんと、待っていたと言わんばかりの嬉しそうな顔で座っている男性がいた。
さらに土方さんの横には、長い髪を下の方でまとめた優しそうな顔の男性も座っている。
「……座れ」
土方さんの低い声に、肩がビクリと揺れた。
私の横を通った沖田さんの背中を見て、言われるがまま前に進み、ぎこちなく正座をする。
畳の感触だけでなく、この室内全体の空気がやけに冷たく感じる。
全員座るも、誰も口を開かず、沈黙だけが流れる。
「澪さん、紹介しますね。澪さんの前に座っているのが、局長の近藤勇さん」
沈黙を切るかのように、沖田さんは他己紹介を始めた。
紹介に、近藤さんが「よろしく」と軽く手を上げる。
「澪さんから見て近藤さんの右にいるのが副長の土方歳三さん。昨日お会いしましたよね」
「……はい」
土方さんは相変わらずの仏頂面で、鼻を鳴らして視線を逸らす。
「そして、その土方さんの隣にいるのが同じ副長の山南敬助さん」
「よろしくお願いします」
「彼は土方さんとは違って温厚で心優しい副長ですから、安心して大丈夫ですよ」
「んだと?おい総司、もういっぺん言ってみろ」
と、もう見慣れた笑顔で土方さんを揶揄う沖田さん。
それに怒鳴る土方さんと、その光景を楽しそうにみている近藤さんと山南さん。
世界中を探しても、鬼の副長あろうお方を弄って楽しそうにしているのは、彼らだけな気がする……。
