「はい、完成!」と、女性は私の両肩を軽く叩いた。
鏡がないから、自分がどんな風になったのかは分からない。
ただ一つ分かっているのは、非常に動きづらいということだけだ。
この女性はこの動きづらさの中、慣れた足取りで縁側を歩いていた。
やっぱり、どの時代でも慣れって必要なんだな。
着物は明るく、だけど落ち着いた抹茶色に綺麗な花模様がついている。
髪も結ってもらい、荷物を持って風呂場を後にした。
「おや、ちょうどよかったみたいですね」
女性の後に続いて歩いていると、前から沖田さんが歩いてきた。
「野良猫も洗えば綺麗になる、というのは本当みたいですね」
「………さっきから失礼ですね」
そう返しながらも、強くは言えなかった。
ここは八木邸で、住んでいる人たちは皆壬生浪士組の隊士たちで、今目の前にいるのはあの沖田総司。
調べているときに、一度手合わせをお願いしたいと思った人。
無論、最初に会った時に感じたオーラの凄さで、手合わせはお願いしたくないと思ったけど。
「それでは、私はこれで」
女性が頭を下げて、沖田さんの横を通りすぎた。
それに答えるように、私と沖田さんも軽く頭を下げる。
「僕たちも行きましょうか。近藤さんと土方さんが待っています」
その名前に、無意識に背筋が伸び、息を呑んだ。
局長の近藤勇と副長の土方歳三、そして沖田総司。
この三人が集まるということは、おそらく阿比留鋭三郎の名前を口にしたから。
そのことについての尋問が始まるのだろう……。
お風呂に入れて安心できたのも束の間。
私の心には、また恐怖と不安という風が吹き出した。
