ご飯を食べようとお茶碗を持つけど、この茶色が何なのか未だ分からず、再びじっと見つめてしまう。
「麦米ですよ。知りませんか?」
ご飯を見て悩んでいる私を見て、沖田さんが声をかけてきた。
麦米は名前は知っているけど、食べたことがない。
今の主食は白米が主流で、麦米をあまり見る機会も食べる機会もないからだ。
両親や祖父母から聞く昔話に、麦米という単語は何回か出てきてはいたけど。
麦米を口の中に入れると、白米とは違ってしっかりとした歯ごたえで美味しかった。
「……ごちそうさまでした」
「お口に合ったようで何よりです」
沖田さんが優しく微笑んだ。
「さて、話はこれからだ」
土方さんの低くて少し圧のある声が、静かに響く。
土方さんのその言葉に、沖田さんも真面目な表情になった。
話はこれからと言われても、私自身、自分の身に何が起きたのかも把握しきれていない。
分かっていることは、道場で稽古中に倒れ、目が覚めたら土方さんと沖田さんが目の前にいて、このさとやで昼食をごちそうになったことくらいだ。
それなのに、これから話と言われても、何も答えられるはずがない。
「お前はなぜ、あのような場所で倒れていた?」
土方さんの鋭い目線が全身に刺さる。
まるで、豹の前に子ウサギがいるような感覚だ。
「大丈夫ですよ、澪さん。私たちはただ、倒れていた理由を知りたいのです。この町は今、何かと物騒ですから」
真面目な表情でも、沖田さんの言葉はどこか柔らかい。
だけど、私の口からは言葉が、出てこない。
私は下を向いて、膝の上で手を強く握った。
周りは賑やかなのに、私たち三人の間だけ時が止まったかのように沈黙が流れる。
