梅雨が明け、本格的な夏が始まった七月中旬。
窓から差し込む日差しが眩しく、思わず目を細める。
「今日のホームルームの話は、新撰組副長土方歳三だ。彼は、石田散薬という家伝薬を売りながら────」
期末テストが終わり、終業式までの残り一週間は午前授業となった私たち生徒は、完全に浮かれていた。
歴史が大好きな担任の塚井先生は、ホームルームで連絡事項がないときは、こうして歴史の話をしてくる。
正直に言って、歴史は苦手だ。
覚えることがたくさんあり、聞いているだけで眠くなってくる。
周りを見れば、クラスの大半がスマホや本を読んでいる。
この時間が授業じゃないということだけが救いだ。
でも、なぜか塚井先生の歴史の話は耳にスッと入ってくる。先生が話し上手というのもあるのだろう。
私は頬杖を突きながら、先生の話に耳を傾ける。
「───道場破りだった土方は、天然理心流に正式入門するわけだが」
へぇ、と思いながら、窓の外に目を向ける。
青く澄んだ空を、一羽の鳥が優雅に飛び回っているのが視界に入る。
今朝の天気予報では、昼間の気温は三十度近くまで上がると言っていた。
そんな暑さの中ずっと外にいたら、きっと人は熱中症で倒れてしまう。
それなのに鳥は、何百、何千キロを飛び回っている。
「世の中って不思議だなぁ」
小さく呟いて、先生の方に視線を戻す。
もはや生徒のほとんどが聞いていない中で、先生の声が淡々と教室に響く。
まともに聞いているのは、たぶん私ぐらいだ。
まるで、空き教室で一対一の授業を受けている気分だ。
「それで土方は────」
先生の声と同時にチャイムが学校中に鳴り響く。
クラス委員の号令が終わるとともに、静かだった教室は一気に騒がしくなった。
