「着きましたよ」
「佐戸さん、いるか?」
二人に連れて来れられたのは、『さとや』と書かれた暖簾がかかっているお店らしき建物の前だった。
戸口を開けて土方さんが声をかけると、三十代後半ぐらいの男性が奥から出てくる。
さとやの中は古民家らしい雰囲気がありつつ、席はほとんど埋まっていて、お客さんの食べているものを見る限り、どうやら定食屋らしい。
奥から出てきた男性は色黒でガタイが良く、その肩幅の広さに驚いてしまう。
それと同時に、この人が全部これを作っていると思うと、少しギャップを感じる。
「歳と総司か。いつものか?」
「いや、今日は用があってきた。総司」
土方さんが沖田さんを呼ぶと、沖田さんは頷き、私に前へ出るように促した。
この男性も私と同じ道着を着ている。
まるで父親みたいだ。父親の方が多分年上だけど。
外を歩いているときに刺さっていた視線はおそらく、私が女性でありながら男性のような恰好をしていたからだろう。
道着は性別問わず一緒だけど、袴や着物は性別によってデザインが変わってくる。
近くで見ると、男性からは土方さんや沖田さんとは違うオーラを感じる。
「この子が近くの路地裏で倒れていましてね。お腹が空いているようなので何か食べるものを。お代は、私が持ちますので」
最後の言葉に、思わず沖田さんを見上げる。すると沖田さんは、
「先ほど怯えさせてしまったお詫びです」
と、優しく微笑んだ。
沖田さんは気づいていたんだ。
私が敵意ではなく、焦りと不安から剣先を向けていたことを。
そういえば、さっきから敵意丸出しの土方さんとは違って、沖田さんからは敵意を何も感じない。
新選組については、ウィキペディアを軽く通し見していたぐらいで、まだ細かいことは知れていない。
人物名や事件名などは大体記憶したけれど。
