初めての恋は、時代を越えたあなたと。


「ふう……」

「お疲れ様。やったじゃん!」

「相変わらずすげえなぁ、一之瀬は」



「はい」と朱莉から渡されたスポドリを飲む。

入口の方から物音がして目線を送ると、門下生が次々と入ってきていた。

そういえば、気づかないうちに人が増えている気がする……。

時計を見れば、針は午後四時を少し回っていた。

それにしても、五分間の休憩なんてあっという間だ。

あと二人……いや、あと一人が終わればすぐに出番なんて回ってくる。

その間に師範の癖の一つや二つを見つけたい。

そう思ったけど、スマホを手に取り、よく使っている動画サブスクからの通知が来ていないか確認する。

だけど、その判断がミスだった。

ロック画面にはアプリから通知が来ていて、"今すぐ動画をチェックしよう!"という内容だったけど、模擬戦を見てまだ時間があると思い、スマホのロックを開く。

私はドキュメンタリーが好きで、サブスクではよくドキュメンタリーを見ている。

今日のドキュメンタリーは新撰組についてだった。

あらすじとしては、アナウンサーが新撰組ゆかりの地を巡って、当時のことを知っていくというものらしい。

この日付は、学校がテスト期間の時だ。

終了まで一週間以上あるみたいだから、稽古後にゆっくり見るとしよう。



「次!澪!今来たものはストレッチをしておけ」

「「はい!」」



師範の指示に、今来た門下生たちが一斉に返事をした。



〈こちらは、かつて新撰組一番隊隊長を務めた沖田総司が使用していたとされる愛刀――――……〉


「さっきも言ったが、少し本気を出すからな」

「はい」



さっきより集中しないと、あっという間に取られてしまうかもしれない。

それなのに、立ち眩みなのか、目が少し霞む。

面や小手をつけているから擦ることもできないし、目をつむって頭を軽く振るけど、どんどん目の前が霧に包まれていく。



「澪?」

「おい、大丈夫か?」



朱莉と師範の声が聞こえると同時ぐらいのタイミングで、私は床に倒れこんだ。



「澪!?」



目を閉じたら普通は暗いはずなのに、私の視界は霧がかかって白いままだ。しかも、時間が経つたびに濃くなっていっている。

テスト期間に部活、土日は道場に毎日日課のランニング。

毎日のように動いているから、知らぬ間に体が疲労の限界を迎えていたのかもしれない。

睡眠は十分に摂っているつもりだったけど、足りなかったのか。

頑張って意識を朱莉達の声に縋るように保っているけど、それも遠くなっていくのが分かる。

ゆっくり休めという神様からの命令なのか。

神様なんて信じてはいないけど。

そうして私は、道場で防具をつけたまま意識を手放した。