初めての恋は、時代を越えたあなたと。


澪に伝えた通り、最初はほんの興味というか好奇心からだった。

本当に野良猫みたいな感じだったから、初めて笑った顔を見た時は驚いた。


貴女は、こんなにも優しく柔らかく笑う人なのだと。


芹沢粛清の時にはもう好きだったのかもしれない。いや、もう少しその前から私は彼女に惚れていたのだろう。

好きと自覚してしまった時には、もう何もかもが手遅れだった。

他の隊士と話しているだけで嫉妬して、傷つけられたら傷つけた相手を今すぐ斬ってやりたいとか思うようになっていた。

近藤さんや土方さんにも俺の想いは知られていて、気づいていないのは澪だけだったけれど、困惑する顔さえ可愛かった。

彼女はすごく心の優しい人で、隊士が怪我をしたら自分のことのようにつらくなったり、隊士の訃報を知るとすごく悲しんで、墓参りにも行ってくれていた。


――そして、沖田総司としての死から百六十年の五月三十日。


ある出来事をきっかけに前世の記憶を思い出した俺は、倉沖 円(くらおき まどか)という名前で警察官として働いている。

捜査一課に配属されてからは連日事件に追われていて、寝るためだけに家に帰っているようなもんだ。

交番勤務時代に比べるとこんなにも忙しいのかと気が狂いそうになった。

事件捜査の帰り道、赤信号で一時停止していた時、ふと二人の女性が視界に入った。

怪我をしたのか、若い人が年配の人に声をかけている。

若い人は慣れた手つきで処置を終えると、歩いていく年配の人を笑顔で見送った。

顔が見えた瞬間、俺は息を飲まざるを得なかった。

髪は短くなっているけれど、見間違えるはずがない。

俺の前世は新撰組一番隊隊長の沖田総司で、死の間際に来世で会おうと約束した女性(ひと)がそこにいた。



「……澪」



着物姿もすごく似合っていたけれど、今の服の方がしっくりくるのは何故だろう。

そんなことより、あれから百六十年経っているのに顔が何一つ変わっていない。

そんなことあるのか?と思いながら、ゆっくりと進み始める車に揺られる。

彼女の姿が見えなくなり、顔を前に戻す。


『その来世で、待ってるね』


あの時の彼女の顔が、鮮明に脳裏に映し出される。


──ねぇ、澪。貴女は今、笑えていますか?













【初めての恋は、時代を超えたあなたと。】~完~