いつも通り三人で話しているとチャイムが鳴り、それと同時に塚井先生が入ってくる。
いつもはここで歴史の話をするのだけれど、終業式ということもあり、必要な連絡事項だけで終わり、私たちは廊下に並んだ。
教室から出た瞬間暑さに包まれ、四方八方から文句が聞こえてくる。
体育館は窓と扉が全開に開いており、熱風と蝉の鳴き声が響き通る。
校長の長い話が終わり、終業式が終わった途端、生徒たち大半が教室に向けて走り出した。
教室に戻って少しすると、塚井先生が何やら準備をし始めた。
「まだ終わるまでに時間あるから、昨日放送していた新撰組のドキュメンタリー見るぞー」
「新撰組だって。澪、調べてたよね?」
「うん、まぁ」
新撰組という言葉に、体が少しだけ反応する。
けれど、見る気になれない私は、一人だけ頬杖をついて窓の外を眺める。
校門の方には帰っていく生徒たちの姿がちらほら見える。
刀の音も、怒号も、血の匂いすらしない。
彼らもこういう世界を望んでいたのかもしれないと思うと、彼らにとってあんな世界はあまりにも残酷だっただろう。
理不尽に命を奪われ、家族のような仲間達が次々と命を落としていく。
もし、私がこんなことを考えていると知ったら、総司さんはきっと「過剰評価しすぎですよ」と笑うかもしれない。
──ねぇ、総司さん。貴方は、もうこの平和な世界に来ているの?
画面からは、現場アナウンサーが新撰組が使っていた場所を巡りながら説明している声が聞こえる。
いろんな事件についても触れていて、その度に胸に針が刺さるような感じがしていた。
そんな時、とある言葉が私の耳に止まった。
《こちらは、新撰組一番隊隊長の沖田総司が、愛する女性に贈ったとされている簪です》
「澪、あの簪綺麗じゃない?」
「うそ……」
画面に映ったのは、池田屋事件が起きる前に総司さんが私にくれた、桜の飾りが付いた簪だった。
その瞬間、脳裏に幕末で過ごした五年間の記憶が一気に再生された。
総司さんと土方さんに声をかけられ、ご飯を奢ってもらったこと。
八木邸で宗太君や弥吉君と遊んだり、芹沢さん達に挨拶した時のこと。
総司さんと四条通の方まで歩いて行ったこと、護衛付きの買い出しをしたこと。
山南さんや平助君の死を間近で感じたこと。
そして何より、江戸で総司さんに告白され、私も好きだと伝えたこと。
それら全てが、夢ではなく本当に現実だったんだということを知った時には、胸の奥から熱いものが込み上げてきていた。
