学校に着くと、玄関は生徒たちでごった返していた。
五年前……いや、二日前の下校時もこんな感じだったと思い出す。
生徒たちの賑やかな声を耳にしながら、私たちは真っ直ぐ教室へと歩いていく。
階段や廊下で立ち話する生徒たちの間をすり抜けながら教室に入ると、エアコンが付いていて冷たい風が教室全体に流れていた。
汗ふきシートや制汗剤の匂いが、教室に充満している。
そこに混ざるように、私達もポーチから制汗剤を取り出して首筋などに付けていく。
すると、後から入ってきた颯がクラスメイトたちの挨拶に返事をしながら私の元へ来た。
「おはよ。体、もう平気?」
「おはよう。うん、もう大丈夫。ありがとう」
微笑んで感謝をしただけなのに、今朝の母親といい、何故か颯だけでなく朱莉まで固まっている。
なにかおかしなことがあったのかと考えると、思い当たる節がすぐに見つかった。
私は幕末に飛ばされるまで、感情が表に出ていなかったのだ。
向こうで感情が表に出るようになってからは、笑ったり怒ったりするのが当たり前だったから忘れていた。
「やっぱりさ、澪、笑うようになったよね?昨日の病院の時もそうだけど」
「今まで氷の姫だったのにな」
「颯?」
「いや、お前知ってる?ずっとなんて呼ばれてたか。感情が顔に出ねぇから、氷の姫って呼ばれてたんだぜ?」
にっこり微笑んで名前を呼ぶが、颯は動じることなく続けた。
そうだ。颯の言う通り、私はずっと氷の姫と呼ばれていた。
感情が顔に出ないからだけじゃなく、話しかけても反応が氷のように冷たいからという理由で、そう呼ばれていた。
周りから恐れられる中、話しかけたのがこの二人だったのだ。
「そんなこと言ってる人は放っておいてさ、朱莉、放課後アイス食べに行かない?」
「え!行く!!やった、澪から初めての誘いだっ」
嬉しそうに笑う朱莉を見てると私も嬉しくなって、二人で笑い合う。
「ねーえ!ごめんって!謝るから俺も連れてって!」
「だって。どうする?」
「どうしよっか」
何故か私にではなく朱莉に弁明する颯を見て、可笑しくなって静かに笑う。
いつも見ていた光景なのに、なんか今日はいつもと違って見える。
笑うだけでいつもより二人が明るく見えるし、私自身もすごく楽しんでいるのが分かる。
本当に、新撰組には感謝いっぱいで頭が上がらない。
