初めての恋は、時代を越えたあなたと。


この家の間取りを覚えるのに、そう長い時間はかからなかった。

季節は移ろい、満開に咲いていた桜が散り、緑葉へと姿を変え始めた五月頭。

私は、いつものように沖田さんの看病とみつさんのお手伝いをしていた。

京での忙しさが嘘のように、江戸ではのんびり暮らしている。

沖田さんの体調が良いときは縁側に座って思い出に花を咲かせたり、時には団子を挟んでみつさんと三人で話したりもしている。

一方で私と沖田さんには、ずっと懸念していることがあった。

それは、新選組が今、どんな風になっているかということだった。

春になる頃、土方さんから一通の文が届き、そこには井上さんと山崎さんの訃報と永倉さん原田さんが離隊するかもしれないという内容が書かれていた。

山崎さんは密偵として活動していることが多く、顔を見たのは片手に収まるほどしかなかった。

井上さんは新選組の中でも年齢が上の方で、私からすればおじいちゃん的な存在だった。

実際に原田さんに『源さんと嬢ちゃんはあれだな。祖父と孫だな!』と言われたことがあるくらいだ。

懐かしいなと思いながら干し終わった洗濯物を眺めていると、後ろからみつさんに声をかけられた。



「はい。土方さんから澪ちゃん宛に」

「ありがとうございます」



みつさんは優しく微笑むと「総司のところにいるから何かあったら呼んで」と言い残して、去っていった。

縁側に腰を下ろして、土方さんからの文を開く。

温かな風に吹かれながら土方さんの文に目を通していくと、信じられない内容が書かれていた。


【此度、誠に申し上げ難き儀ながら、新撰組局長近藤勇儀、四月二十五日板橋に於いて斬首相成り候】


それは、近藤さんが板橋という場所で斬首され亡くなったという訃報だった。

文を持つ手が震え始め、文字が涙で滲み始めていく。



「澪ちゃん、私――。澪ちゃん!?どうしたの!?」



何かを言いかけたみつさんが慌てて駆け寄り、私の背中を擦ってくれる。

文を胸に当てて泣いているため、みつさんには内容が見えていないから、私が泣いている理由も分からない。

文の最後には、沖田さんに伝えるかどうかは私に任せると書いている。

もし言ってしまえば、あの人はきっと無茶をしてまで剣を握りだすだろう。



「澪さん」



その声に慌てて涙を拭うも、顔を上げる気にはなれなかった。

少し沈黙が流れたあと、背中を預けるように沖田さんが後ろに座る。