沖田さんが横になっているそばでいつの間に眠っていたのか、甲板以降の記憶がほとんどない。
目を覚ました時には、船はゆっくりと停止状態に入っていた。
西本願寺や不動堂村へと屯所を移すようになってからまともに休んでいなかったのだと、今になって実感する。
江戸に入り、私たちは駕籠に乗り込んでみつさんの家へと向かった。
沖田さんは少し歩いただけで咳が酷くなるという、かなり病状は良くない。
私にできることはそばにいて、別れの日が来るその日まで支え続けることだ。
断片的だが簾の隙間から聞こえる町の喧騒は賑やかやはずなのに、京より静かに感じる。
その様子を、沖田さんは寂しそうに眺めていた。
そしてその喧騒はやがて静かになっていき、駕籠がゆっくりと下ろされる頃には、何も聞こえなくなっていた。
「沖田さん」
駕籠を運ぶ人達に頭を下げ、沖田さんを支えながら小さな門の下を通る。
全盛期の頃であればこの距離はなんとも無かっただろうが、今の沖田さんにはこの距離でさえ少し苦しそうだ。
玄関らしい戸口を開け、中に向けて少し大きな声で挨拶をすると、綺麗な女性が小走りで走ってきた。
「澪と申します。本日からお世話になります」
「まあ、貴女が澪さん?総司の姉のみつです。この子の文にいつも貴女のことが書かれていて、お会いしたいと思っていましたの」
「姉上……」
柔らかく笑うその顔は、どことなく沖田さんと似ている。
というか、なぜ文に私のことを書いたのだろうと沖田さんを見ると、気まずそうに視線を逸らした。
「長旅で疲れたでしょう。どうぞ中へ」
促されるまま私たちは家に上がり、沖田さんが休む場所へと案内された。
