「急いで!時間ないよ!」
翌日、近藤さんに頼まれた通り宴の食事を作っている調理場はいつもより慌ただしかった。
人数は近藤さんと伊藤さんとその従者の三名だと聞いているが、豪勢にしてやって欲しいとの頼みなので、膳に並ぶ数より多い。
量も多く、一気には作れないので、隊士の夕餉の後片付けを後回しにしてひたすら作っている。
今朝早くに土方さんが部屋を訪ねてきて、私が得意な料理をすればいいと言ってくれた。
だから、ここでも伝わるような現代の料理を作ることにしたのだけれど、調理法を教えるのに時間を取られてしまって、現在の状況だ。
出来上がったのは、伊藤さんたちがちょうどこの屯所の門を通り抜けた頃だった。
「お久しぶりですねぇ。元気でしたか?」
「はい」
「……じゃあ先生、報告でもし合いながら頂きましょうか。澪さんは下がっていいよ。ありがとう」
私が伊藤に苦手意識を抱いてることを知っているのだろう。
一回、廊下で伊藤と鉢合わせした時に話しかけられ、そこに土方さんが割って入ってくれたことがあった。
その時に報告として聞いたのかもしれない。
近藤さんたちが何を考えているかは分からないし、知ったところで私にできることは何もない。
『後悔はするな』
土方さんのその言葉だけが、胸の奥にずっと引っかかっていた。
