朝餉が終わり、その片付けも終わりかけた頃、原田さんが調理場に顔を出した。
「平助達、そろそろ行くってよ」
「そうですか」
御陵衛士には、斎藤さんが密偵としてついて行くらしい。
御陵衛士だとしても、新撰組として近藤さん達と共に活躍してきた彼らの最期を知ってしまっている以上、笑顔で見送るなど、私にはできない。
無言で仕事をしているのを返事と受け取ったのか、原田さんは何も言わずに調理場に背を向けて歩き出した。
密偵ということは、斎藤さんは新撰組に戻ってくるだろう。
それでも、一時的とはいえ斎藤さんまで屯所を離れるのはすごく寂しい。
池田屋事件で彼らの名が広まったのは、そばでずっと見てきた私としてはかなり嬉しいことだった。
その反面、代償が大きいだけでなく、町の人達からは以前よりもまして怯えられる存在となっていった。
私でさえ、作戦を練ったり戦ったりしている彼らを見ると、時々怖いと感じる時がある。
当たり前だけど、普段笑い合ったりふざけ合ったりしてる姿とは一変するからだ。
そんな彼らの中で、沖田さんの次によく話していたのが藤堂さんだった。
お礼のひとつも言えていないのに、一方的に寂しさを感じて、仕事に逃げている。
何もしていなかったら、手を止めたその瞬間から、今までの藤堂さんの楽しそうな顔が頭に浮かんで寂しくなり、泣いてしまいそうだったから。
