翌日の三月二十日の明け六つ(夜明け頃)、私は再び光縁寺を訪れていた。
西本願寺に移動する前日にお雅さんに帯の付け方を一から教えてもらい、西本願寺に来てからは一人でつけられるようになった。
夜明けはまだ空気が冷えるため、着物の上から羽織を肩にかけて外に出ないといけない。
忙しさのあまり、山南さんの命日に足を運べていなかったため、御陵衛士という隊ができたということと沖田さんの第一線から引くということを、山南さんに報告していた。
ここには山南さんだけではなく、四番隊隊長だった松原忠司さんや芹沢さん一派にいた副長助勤の野口健司さん、そして隊の勘定方である 河合 耆三郎さんも眠っている。
それでも私は、この中で一番関わりのあった山南さんに話をしに来ていた。
「……山南さん、私は本当に、皆さんのためになれているのでしょうか」
何の音もしない静かな場所で、私の小さな声がやけに大きく感じる。
こんな時山南さんなら、沖田さんや藤堂さんになんと声をかけただろう。
新撰組が大きくなって忙しいはずなのに、私だけが未だに山南さんの逝去から前に進めていない気がする。
前を向こうとしても、いつもあの優しい笑顔を思い出してしまう。
「……また来ますね」
次はいつ来られるかは分からないし、今みたいに命日に来られないかもしれない。
ましてや、沖田さんの江戸帰還へついて行くことになれば、現代に戻るまではこの場には二度と来られないだろう。
ついて行くことになればというか、言われなくともついて行く気でいるのだけれど。
立ち上がって門の方を向くと、浴衣に羽織をかけた沖田さんが門に凭れて立っていた。
「……出歩いたりして、大丈夫なんですか?」
近づいて声をかけると、沖田さんは小さく頷いた。
「けほっ……。目が覚めて歩いていたら、貴女が門の方へ歩いていくのが見えたので」
「ですが、お身体に障っては……」
お身体に障ってはいけないと言おうとすると、少し痩せた体に抱きしめられた。
少しでも食べられるように量を減らし、お粥にもしてあるのだが、それでも食欲がないらしく、最近はまた一段と痩せた気がする。
心配する私を他所に、沖田さんは「なら……」と小さく漏らす。
「何も言わずに一人で出かけないで。守ると決めたのに、私はもう……以前のように貴女を守れないのだから」
体が離されたと思えば、沖田さんは自身の脇差に手をかけて悔しそうに見つめた。
ふと誰かが視界に入り目線を移すと、土方さんが眠そうに立っていた。
「私一人では貴女を守れませんからね。起こしてついてきてもらいました」
私の視線に気づいた沖田さんが、悪気なさそうに教えてくれた。
注意を受けることになるだろうと思いながら土方さんの方へ行き、三人で屯所へと向かう。
