私は普段、感情が顔に出ることがない。
だから、周りから怖がられたり、何を考えてるか分からないと言われ続けてきた。
家庭環境は良い方だ。
父親が母親を溺愛していて、母親は嬉しそうに嫌がっている。いわゆる照れ隠しだ。
そんな中出会ったのが、朱莉と颯だ。
周りから怯えられる私に、怯える素振りすら見せず、気さくに話しかけてくれた。
いつも一緒にいるから二人は、私が感情を出さなくても、喜怒哀楽を読み取ってくれるようになった。
でも朱莉曰く、私はだいぶ分かりやすいらしい。
それは、二人が私といつも一緒にいて、喜怒哀楽の見分けがついたからだと思っていたけど、最初から分かりやすいと言われた。
自分ではよく分からないけど。
「ねぇ、ずっと聞いてみたかったんだけど」
頭に手ぬぐいを巻いていると、朱莉は私にだけ聞こえる声量で話しかけてきた。
「澪の好きなタイプって何?」
稽古中に聞くことではないと思いながらも、好きなタイプについて考える。
幼い頃から剣道ばかりしてきたから、恋愛なんて考えたことがなかった。
この人はイケメンとか、この人はイマイチという思考は一応私にもある。
だけど、誰も恋愛対象で見れた試しがない。
恋愛系のお話が大好きな朱莉は、よく恋愛漫画や小説、リアリティーショーを見ている。
そういう朱莉の好きなタイプは、中身が切実な人らしい。
「好きなタイプ……。優しくて、剣の腕が私より強い人?」
そう答えて私は、防具を順番につけ始める。
「何で疑問形なの。ていうか、それって師範だよね?」
「あの人はない」
「次!澪!」
まるで聞かれていたかのように、いいタイミングで師範に呼ばれた。
私は師範の前まで行き、そっと目を閉じる。
朱莉のおかげで、緊張で張りつめていた力が嘘のように抜けていくのを感じる。
今はまだ勝てなくてもいい。ただ一本、それを入れるだけでも、前に一歩を踏み出せるのだから。
