「一つ、聞いてもいいですか?」
自分でも驚くほど小さくて震えた声だった。
沖田さんは不思議そうに首を傾げて、小さく頷いた。
この世には、生まれ変わりという言葉がある。
人は、死んで終わりではなく、再び新しい命として生まれてくることだ。
本当にそんなのがあるのかは分からないし、信じてもいない。
けれど、私には信じたい理由があった。
タイムスリップという非現実的な現象にあって、歴史上の人物として知る人達と出会い、笑い合ったり言葉を交わしている。
本来なら有り得るはずのない経験をしてしまった私に、生まれ変わりを否定することはできない。
生まれ変わりが本当にあって、現代に戻ってもこの人達と居たいと願ってしまっている部分もある。
私は膝の上で拳を強く握る。
聞いてしまってはもう戻れない気がするけど、それでも聞かずにはいられなかった。
「もし、来世というのがあって、その来世が今よりすごく平和な世界だとしたら、沖田さんはそこで何をしたいですか?」
声が震え、目もじんわりと熱くなっていく。
今泣くわけにはいかないと、必死で涙をこらえる。
私の質問に沖田さんは少し驚いたように目を瞬かせ、しばらく考え込んだ。
「来世、ですか。そうですね……」
春の青く澄んだ空を見上げると同時に、私の手に大きくて白い手が重なる。
驚いた私は、その白い手と空を見上げる沖田さんの横顔を交互に見る。
「どれだけ平和な世であっても、そこに住む人や大切な人の笑顔を守りたいですかね」
優しく微笑みながら、「私は、そういう生き方しかできませんから」と続けた。
この人は本当に、心から新撰組そのものなのだと知ると同時に、私の胸は強く締め付けられた。
他人のことを第一に考えるこの人が、どうして病にかかってしまったのだろうか。
できることなら、私が今すぐにでも代わってあげたい。
沖田さんにはずっと、近藤さんや土方さんの隣で笑って、京の町を守り続けてもらいたい。
いつの間に涙腺が開いたのか、堪えていた涙が白くて大きな手に一粒ずつ零れ落ちていく。
「ダメですね……」
静かに落ちる声に顔を上げると、もう片方の手が私の頬に伸びてきた。
細いくて長い親指に、涙が優しく拭われていく。
「笑顔を守りたいと言ったばかりなのに、貴女は泣いている」
笑顔を守りたいという中に、私も入っているのだろうか。
にしても、私だって沖田さんの困ったように笑う顔はもう見たくない。
そう言えば楽なのだろうが、この人は無理をしてしまう人だ。
私も散々心配と迷惑をかけてきたことだから、強くは言えない。
私の涙を優しく拭うその仕草に、鼓動は速くなっていくだけだった。
言わないと、胸の奥に秘めると決めているのに、この時の私は好きという言葉が口から出そうになっていた。
