藤堂さんは松本先生のことを怖いと言っていたけれど、土方さんより怖くないと思ってしまったのはどうしてだろう。
そんな事を考えながら境内を歩いていると、曲がった先に松本先生と沖田さんの姿を見つけ、思わず隠れる。
「今の話を聞くに、まず言えるのは労咳だ」
口元に手を当て声が出ないようにして、静かに息を呑む。
沖田さんが労咳だということは最初から知っていた。
けれど、あまりにも普通に過ごす沖田さんを見て、本当に労咳なのかと疑う時もあった。
恋を自覚してからは尚のこと、労咳が嘘であって欲しいと願うようになっていた。
松本先生が言うのだから、沖田さんは紛れもなく労咳。
「先生、あとどのくらい生きられますかね?」
「分からん。一年か五年か。はたまた十年か」
聞きたくないと思えば思ってしまうほど体は動かず、二人の会話に耳を澄まし続ける。
「今すぐとは言わんが、新撰組を離れることも視野に入れておくことだ」
明確な月日までは書いていなかったけれど、沖田さんは療養のために江戸に戻る。
たとえ第一線で活躍できなくなったとしても、江戸に戻る日が来たとしても、私はずっと沖田さんのそばにいよう。
ちゃんと実在していた人物を、どうしようもなく愛していたと誇れるように。
「澪さん、いるんでしょう?」
一つの足音が遠くなっていき、戻ろうとした時、後ろから声が飛んできた。
足を止めて躊躇するも、声のする方に足を向けて歩き出す。
姿を出すと、沖田さんはゆっくりと振り返って困ったように微笑んだ。
「どうして、分かったんですか?」
「澪さんの気配がしていましたから」
私の気配とは一体何なのだろう。
沖田さんは時々、今みたいな分からない事を口にする時がある。
「……聞いてしまったんですね」
「すみません……」
初めから知ってはいたけど、沖田さんからすれば私が今自分の病気を知った初めての人なのだろう。
「近藤さん達には内緒で」
沖田さんはこうして、自分のことを隠したがる。
でもそれは、一番隊隊長として活動出来るギリギリまで近藤さんを支えたいという意思があるのだろう。
だとすれば、それを否定することはできない。
自身の体を一番に考えて欲しいが、どんな時だって他人を優先し続けていた人に、そんなことを言うのは酷だ。
けれど、心の中では足りないくらいの心配をさせてください。
