沖田さんは相変わらず、私の歩幅とスピードに合わせて歩いてくれている。
軽く建物内を案内されながら、長い廊下をひたすら歩く。
「山南さんのところに行っていたんですよね?」
静かに降ってくる声に、小さく頷く。
山南さんは本当に沖田さんのことを弟のように可愛がっていて、沖田さんもまた山南さんを慕っていたに違いない。
なのに、追手や介錯を任され、沖田さんの方がよほどつらいのかもしれない。
沖田さんと話せなかったのは、山南さんの介錯を行った沖田さんへの掛ける言葉がずっと見つからなかったというのも正直ある。
私自身、その日の夕餉は喉を通らなかった。
小さかった屯所から、こんなに大きな場所に移ったということを今度山南さんに知らせに行こう。
「ここですよ、局長室」
「……失礼します」
場所が変わっても、局長の部屋に入るのはやはり緊張する。
部屋に入ると、近藤さんを真ん中に、近藤さんの左側に土方さんと伊藤さんが座っていた。
挨拶の時は優しい印象を持ったけれど、その時からこの人にはどこか全てを見透かされていそうで、少し苦手だ。
軽く背中を押された私は、近藤さんの前で正座をする。
「来て早々済まないね」
「いえ。それで、お話というのは?」
「澪さんには八木邸で本当にお世話になったと思っている。それで、ここへの移転に伴って、君の部屋を用意した」
八木邸では私専用の部屋はなく、化粧部屋を寝室代わりさせてもらっていた。
だけど今、聞き間違いでなければ私の部屋を用意したと近藤さんは口にした。
「そして、澪さんには総司付き兼女中や使用人達のまとめ役になって欲しい」
近藤さんは穏やかな顔で私にそうお願いした。
沖田さん付きということは、沖田さんと居られる時間が増えるということかもしれない。
それはそれですごく嬉しいことだ。
けれど、えっ?今、女中や使用人をまとめる役って言わなかった?
十七歳の私にまとめ役が務まるのだろうか。
「お前は俺たち隊士のことをよく知っているだろうし、そんなお前がまとめ役なら俺達も安心ってわけだ」
「ですが、貴女一人で背負う必要はありません。何かあれば私達に伝えて下さい」
伊藤さんは観察するような目で私を見たまま何も言わなかったけれど、土方さんと沖田さんの後押しのおかげで、私はまとめ役を引き受けた。
