初めての恋は、時代を越えたあなたと。


池田屋事件の後、すぐに平穏が戻ってきたわけではなかった。

池田屋事件から五日後の六月十日に起きた明保野亭事件は、池田屋事件の残党を捕まえるために起きた事件で、新撰組や会津藩と共に戦っていた人が命を落としたと聞いた。

その約一ヶ月後の七月十九日に起きた禁門の変は、長州藩士を筆頭に尊皇攘夷派が反乱を起こした。考えられないほど多くの家が燃焼し、鴨川というところは避難民が溢れ返っていたとか。

その時はまだ八木邸にお世話になっていて、私は隊士の帰りをひたすら待っていただけだった。

気を紛らわすために宗太君や弥吉君と遊んだりもしたけれど、そう簡単に気は紛れなかった。

そして、元治元年十月二十七日に伊東甲子太郎さんたちが新撰組に入隊してきた。

近藤さんは快く受け入れていたものの、山南さんの逝去を受け入れられてない私は、あまり良く思っていなかった。

それは土方さんや沖田さんも同じらしく、以前二人が『近藤さんは何を考えているんだ…』と、歩きながら話しているのを聞いたことがある。

局長である近藤さんの言うことは絶対だから、土方さんでさえ反論はしていなかった。

光縁寺から会話の一つもないまま、私たちは西本願寺に到着した。



「ここだ」



土方さんの声に顔を上げると、想像していたよりも大きな門とそこから見える建物の大きさに驚く。

静かに歩いていく土方さんの背中を追いかけて、門の下を通る。

すると土方さんが小さく溜息をついたので前を見ると、穏やかな顔で歩いてくる沖田さんの姿があった。



「局長室で待ってろと言ったはずだが」

「少しくらい平気です。それに、ちゃんと今日の分の補給をしておかないと」



土方さんと話す沖田さんの目線は、真っ直ぐ私を捉える。

ずっと静かだった胸の奥が、一気に音を立てて動き出す。

土方さんは息を吐くと、「なるべく早く局長室に来い」と言い残して先に歩いて行った。

土方さんがいてくれた方が緊張せずに済むのだけれどと引き留めたところで、あの人のことだから絶対拒否するだろう。

池田屋事件の後からずっと皆は忙しく、沖田さんとこうして二人きりになるのもかなり久しぶりだ。

だからなのか、心臓の音がいつもより早いように感じる。