「おいしいドーナツありますよー!」
「冬……だがアイス!寒さに追い打ちをかけるアイスはいかが〜」
呼び込みをする生徒の声が廊下にこだまする。気持ちよく晴れた冬の日。いよいよ私の高校にも、文化祭がやってきた。
「ひゃ〜さむい〜」
「だろうね……」
ぶるぶる震えながらアイスを食べている葵を横目で見る。そうなると思ってたよ。
アイスの売り上げ、絶対赤字だな……。
「それにしても、胡桃ちゃんの声が出るようになって本当によかったよー。すーっごいしつこい風邪だったね〜」
「え?」
ちょっと待って。確かに私、病気で声が出ないとしか伝えてないけど、だからといってまさかの風邪!?約2年も一緒にいるのに、ずっと風邪引いてて声が出ないと思われてた?
「ん?どうかした?胡桃ちゃん」
「う、ううん。なんでもないよ……」
やけにあっさり声が出るようになったことを受け入れてると思ったら、そういうことだったのか。
「……それで胡桃ちゃん。そろそろ教えてくれてもいいんじゃない?」
小さな木のスプーンを置いて、急に居住まいを正した葵。
「え?何を?」
「何をって、恋のことに決まってるでしょ〜」
「え、あー……うん……」
昨日、外が真っ暗闇になるまで探し回ったけど日向くんは見つからず。よく考えればいつも学校で会っていたので連絡先も分からず。ましてや家がどこかなんて全く分からず。
途方にくれていたらいつのまにか眠っていて朝が来て、今に至る。
「どうだったの、クリスマスデート」
「……逃げちゃった……」
「え?どっちが?」
「……どっちも?先に逃げたのは私だけど、戻ってみたらもういなかった」
「そっかぁ……でも、まだ好きなんだよね?」
「え?なんで……」
葵はむうっと頬を膨らませた。
「だって、心ここにあらずって感じだもん。せっかく私と文化祭回ってるっていうのに〜」
「ご、ごめん……」
「ちがーう。そうじゃなくって」
葵はにっこりと笑った。
「私は胡桃ちゃんに笑顔でいてほしいの!そのために、恋を成就させなくちゃ!」
「あ、葵……」
葵は本当にいい親友だ。
「ふふん、感動した?この葵様に任せなさい!日向くんはきっと、ふたりの思い出の場所にいるはず!」


