「それでは第一回、新聞部女子会を開催しまーす」
パチパチパチ。
私と弥生ちゃんのまばらな拍手が鳴る。
それもフードコートのざわめきに掻き消された。
「本当に三人に任せてきてよかったのでしょうか」
弥生ちゃんが控えめに切り出す。
「いいのいいの。たまには男子を使ってやるくらいの気概でいなきゃ」
「そういうものでしょうか……」
私に視線を遣る弥生ちゃん。
『本気で怒りはしないと思うよ、たぶん』
「そんなことより!今日の本題はずばり――きみだよくるみん!」
びし、と指をさされ、暫く固まる。
何故。こくりと首を傾げる。
「とぼけてもむだだよ〜。知ってるんだからね、私。くるみんとひなたんが、クリスマスデートするって」
「……」
「……え?」
ぱっとこちらを向く弥生ちゃん。
「ほ、本当ですか?」
ま、まあざっくり言ってしまうと確かに、「クリスマスデート」なんだよね……。実は「デート」という言葉だけでは片付けられない諸々があるのだけれど。
渋々と頷くと、弥生ちゃんは目を丸くした。
「さっすがー」
気怠げな声と裏腹に、鈴花先輩のきらきらした瞳が私を見つめる。
「で、どっちから告白したの?」
えっ、どっちからって。一応、向こうから?
その前から私はずっと好きだったけど。もし声が出たとしたら絶対私の方から言ってたと思うけど。
『ちょっと待ってください。どうして先輩がそんなこと知ってるんですか?』
「それはもちろん、友達から教えてもらったー」
こちらへ向けられたメッセージ画面に表示されたのは、「葵」の文字。葵……口が軽いよ……。まあ、鈴花先輩は信用できる人だし、しょうがない。日向くんの秘密や、私の忘れている「過去」があるなんてことは勿論言っていないし、いっか。
「それで?どこに行くの?やっぱりイルミネーション?それともクリスマスマーケットとか?まさか、おうちデート?」
お、おうちデート!?
「お、おうちデートですか……!?」
私の心の声と弥生ちゃんの声が見事にハモった。
「それはさすがに、早すぎるのでは……」
深く同意します。
「いやいや、早すぎることなんてないよ。今の時代、恋愛はぐいぐいいったもん勝ちなんだから」
なんだか葵も同じようなことを言っていたような。恋愛ってそういうものなのかな。奥ゆかしいはもうトレンドじゃないってこと?
恋愛初心者の弊害が出てふたりが冗談を言っているのか本気なのか全然わからない……。
『おうちデートはともかく!何処に行くかは日向くんが考えるからその日までのお楽しみだって』
「ええ〜サプライズじゃん。ひなたんやるねー」
「意外です。彼は明るい言動と見た目に反して真面目なので、事前に相談して着実に決めていくタイプかと」
まあ確かに、元々だろうけど髪色明るいし、いつもにこにこしてて若干天然人たらし感はある。人を見た目で判断してはいけないと言うけど、彼は第一印象とその後がかなり違うタイプだと思う。今回の場合はサプライズなんて浮かれたものじゃなくて、私が忘れている「過去」に向き合えるように、事前に不安に思わないように、丁寧に気遣ってくれているのだと思うけど。
「え、ちなみにさ……何処までやったの?」
『何処まで?』
いったいなんのことだろうと首を傾げる。
「ハグ?キスまで?それとも、それ以上?」
……え。
「えええええっ!?」
私の代わりとでもいうように、弥生ちゃんが抑えた声ながらも叫んだ。
「そ、そんなあけすけな……!よくない、そういうのはよくないかと……!」
「え?今時普通でしょこれくらい」
普通!?普通なの?
い、今時の女子会ってすごい……。
「それでどうなのさくるみん」
「き、聞かないほうがいいですよ先輩」
弥生ちゃん、口では止めてるけど目が興味津々だよ。仕方ない、話を逸らそう。
『そんなことより、鈴花先輩と部長は進路どうなってますか?確か、就職じゃなくてふたりとも大学進学でしたよね?』
「あ、そうそう。そのことなんだけど」
よかった話が逸れた。
「私も部長ももう合格したから、気遣わなくていいよー」
「え、もう合格したんですか」
「うん。部長はまさかの推薦。私は早めに試験あるとこ受けたから」
なるほど。やけに暇そうに部室にいるなあとは思っていたけど、まさかふたりとも既に合格していたとは。そういえば部長、変人だけど成績はいいんだっけ。普段の言動からすると全く想像できないけど、確か生徒会役員でもあったはず。
『それなら安心ですね』
「うん。心おきなくくるみんとひなたんの恋愛をサポートできるよん」
それは遠慮しておきます……。


