「へぇ、文化祭で?すごいねぇ」
夕飯を囲み、お母さんが目を丸くする。
「まあ胡桃は昔から、写真が大好きだもんな」
お父さんも、しみじみとした風に呟いた。そんなに大層なものじゃないけど……。
「あ、そう言えば」
口の中で呟いて、私はお箸を置きスマホを取り出す。
『昔くれたカメラ、あったでしょ?あれ、ほんとにどこにあるか心当たりない?』
子供用の小さな赤いカメラ。
「カメラは、見つかりましたか?」
日向くんにそう問われたあの日から、妙に気になってしまうのだ。
するとお母さんとお父さんは、神妙な顔をして互いに目を合わせた。
ん?どうしたの?
「胡桃」
真剣な顔で、お父さんが口を開く。私は首を傾げる。
「どうしても、あのカメラのことが気になるのか?」
『それは、勿論。だってあれは、ふたりがくれた大事なものだし』
「………俺たちは、胡桃が好きなようにすればいいと思ってる。胡桃が、胡桃自身のために決めていいと思ってるよ、本当に」
要領を得ない発言に、眉をひそめる。
「……心の準備ができたら、私に言って」
最後に、お母さんがそう言った。
それからはさっきまでの異質な雰囲気はどこへやら、いつものなんでもない会話が続く。
でも私はさっきの言葉が気になって、いつも通りには振る舞えなかった。


