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しとしとと降る雨が視界を埋め尽くす。もうすっかり季節は秋で、残暑も過ぎようとしていた。
「なんだかここで会うときは、雨ばっかりだね」
なんて笑う君は、当たり前のようにわたしに会いに来てくれる。
「……日向。わたし、そろそろだと思うの」
窓の外から視線を彼に移す。
微笑んだままで、覚悟の籠もった瞳で、彼は頷く。
「……うん、僕も、そう思う」
再び日向に出会ってから、あの子はいろんなものを乗り越えて、強くなった。だから、きっと。
そっと祈りながら、わたしは隣の彼をみる。
日向の透き通った瞳の中には、灰色の雨が降りしきっていた。
君も、これ以上このままでいたらいけない。
壊れたままでは幸せになれないとわたしに教えたのは、他でもない君自身なのだから。
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「コンテスト?」
私の代わりに大きな声で動揺を表現した鈴花先輩は、アイスを食べる手を止めた。
ここは例のごとく、新聞部部室。
そしてまた例のごとく好き好きに過ごす部員に突如来訪してきたのは、部室が隣同士の写真部の方だった。
「はい、そうなんです。研修の壁新聞を見て、あんな素敵な写真を撮れる人がいるなら是非うちの部活の出し物、“文化祭限定、何でもありな写真コンテスト!”に応募していただけないかと思いまして」
詳しく話を聞くと、こうだ。
写真部は今年の文化祭で、飛び入り参加よし、どんなテーマでもよし、但し写真に限る、というコンテストを開催するらしいのだが、未だにコンテストを開催できるほどの応募数がないらしい。
「せめてあと一作品あるだけでも違うんですよ。どうか力を貸してくれませんか?」
「頭まで下げなくてもいい!よし、喜んで協力しよう!」
頼もしく言った部長。……ちょっと嫌な予感がするのは気の所為かな?
「と、言うわけでよろしく頼んだ胡桃くん」
やっぱりそうきたか。
『はい、わかりました』
まあ、写真は好きだし、いいか。問題なのは……。
私、壁新聞の写真撮った覚えがないんだよね。
帰ってきたあと、いざフォルダをみてみると夕日の木漏れ陽が映った写真が目に止まった。こんな写真、撮ったかな?そう思って眺めていると。
「くるみん、その写真めっちゃいいじゃん!!」
え、いや、これは。
「本当だ!いいですね、それにしましょうよ」
恵くんまで同調してきた。
『でも、私これ、撮った覚えがなくて…』
「え?そうなの?でも撮れてるじゃん。だれかにカメラ渡した?」
『いえ、誰にも』
「あっ、くるみ先輩。その写真あの時撮ったんですか?」
日向くんが会話に参加する。
あの時?
「あー、あれ?バーベキューの前?」
鈴花先輩の問いかけにあっと思い出す。そうだ、私日向くんと森の方へ行ってたんだったけ?あんまり覚えてないけど。
という成り行きでそのままあの写真を載せてしまったのだ。つまり、写真部に挑むほど写真の腕に自信はない。
まあ、何でもあり、というくらいだし、そんなに気負わなくてもいいのだろう。そう思っておこう。
「先輩、どんな写真にするつもりですか?」
部活終わり(というか、活動してないけど)、荷物を持って立ち上がると日向くんがそう聞いてくる。
『まだなにも考えてないよ。そもそも、あの写真だってほんとに私が撮ったのか分からないし……』
「いやいや、あれは先輩が撮ってましたよ。僕見ましたから」
そうなんだよね。日向くんが一緒にいたらしいんだけど、その記憶は私にはないんだな……。
「もしよかったら、僕も一緒に考えたいです!」
『え、手伝ってくれるの?』
「はい。と言っても、僕にできることなんて大してないですけど……」
そんなことない。喋れない私からすれば、誰かがいてくれるだけで安心感が全然違うし、それに……日向くんと、できるだけ一緒にいたい。無理に彼の秘密を暴くつもりはない。でも彼が苦しいとき、ほんの少しだけでも力になれたらって、そう思うから。
「んー。先輩、何かこういうのがいいとかありますか?」
廊下を歩きながら、日向くんが聞いてくる。
『どうだろ、わかんないな。何でもいいって言われると、逆に困る』
「確かに!」
明るく笑った彼は、まあゆっくり探しましょうか、と呟いた。


