明けない夜も、君のそばにいる。

 扉を開けると、そこは別世界のようだった。
 たくさんの人がいて、カラフルなドレスを着ている。
「では、入場していただきましょう。初めに、王太子、遥流(はる)さまです」
 私が待機している扉とは反対側の扉から入場していく遥流(はる)さま。
 少し緊張しているみたい。
 ステージの上にあるイスに座る。
「次に、花嫁です。白神帝国より、白神(しらかみ) 菜花(さな)さまです」
 廉恩(れお)さんのエスコートで、レッドカーペットと呼ばれるものの上を歩く。
 とても歩きにくい。
「ゆっくりでいいですからね」
 みんなからの注目を浴びる。
 ここにいる人たちは、私のことをどう思っているのだろう。
 ……わからない。
 敵国の姫なのだ。
 いつ殺されてもおかしくない。
 でも、生かしておけば、いつか人質として役立つかもしれない。
 私は、ここで幸せに暮らせるだろうか。
菜花(さな)さま。あとは、菜花(さな)さまだけで歩いてください。この階段を上って、イスに座るだけです」
 難しい。
 履きなれていない靴。
 なんでこんな靴を履いて、歩けるの?
 なんとかイスにたどり着く。
 イスに座る。
 顔をあげて、月璃(るり)さんを探す。
 すぐに見つかった。
 私と目が合うと、ニコリと笑ってくれた。
 隣には、海衣(かい)さまもいる。
「では、今からは自由時間とします」
 その声と同時に動き出すみんな。
菜花(さな)さん!とってもキレイね!待機室でメイクしてもらったの?」
「え?あ、うん」
 この国では、お化粧のことをメイクと言うらしい、とさっき覚えた。
「これからよろしくね!菜花(さな)さまのお部屋、私の部屋の隣なの。なにか困ったことがあったら、なんでも言ってね」
「あ、そうなの。ありがとう」
 部屋の場所は知らないけれど、隣らしい。
「そうだ!ごはん食べようよ。グラタンがおススメなの」
「グラタン……。食べてみたい」
「一緒に行こう!ほら、こっち」
 この時、私は気付かなかった。
 遥流(はる)さまと海衣(かい)さまが、この会場から姿を消していたことに。