明けない夜も、君のそばにいる。

「初めまして、遥流(はる)さま。白神(しらかみ) 菜花(さな)です。これから、どうぞ、よろしくお願いします」
「…………よろしく」
 待機室。
 なんとも言えない沈黙がおとずれる。
 気まずい……。
「なあ」
「は、はい!」
結明(ゆめ)とは会ったか?」
「あ、はい」
「元気か?」
「はい。お元気そうでしたよ。私が白神を出るときにも、お見送りに来てくださいました」
「そうか、良かった……」
 優しい人なんだな、と思う。
 結明(ゆめ)さんに似ている。
 さすが姉弟。
「王太子さま、菜花(さな)さま。お時間です」
「わかった。すぐに行く」
 優しいけれど、でも、どこか暗くて……。


 『遥流(はる)、王太子だけど、第二王子なんです。遥流(はる)の母親が正妃だったから、遥流(はる)より前に生まれた第一王子の海衣(かい)さんを差し置いて王太子になってしまって……。だから、王室で孤立しているんです』


 白神を出る前、結明(ゆめ)さんに言われたことを思い出す。
 孤立しているようには見えなかった。
 月璃(るり)さんは、遥流(はる)さまのことを嫌ってはいないようだし……。
「おう、遥流(はる)。お前もいよいよ結婚か。遅かったなぁ~」
「か、海衣(かい)さん」
 待機室から出たところに、この国の第一王子、海衣(かい)さんがいた。
 遥流(はる)さまの手が震えている。
 この人が、月璃(るり)さんの……。
「あ、後ろにいるのが、噂の白神の姫?初めまして。黒宮(くろみや) 海衣(かい)です。白神(しらかみ) 菜花(さな)ちゃんでしょ?これから仲良くしてね」
 少し嘘っぽい笑顔で私に話しかけて来る。
「……よろしくお願いします」
 そういえば、私って、黒宮王国の敵国の姫だよね?
 なんで、月璃(るり)さんは、あんなに気さくに話してくれたんだろう……?
「…………ふーん。可愛いじゃん。気に入った」
 え……?
「君さ、俺を選ぶ気はない?」
「え、でも、海衣(かい)さんって、妃、いますよね。杏野(あんの) 月璃(るり)さん」
「あー、ね。別に良いでしょ。離縁しても、文句は言わないだろうし、あの子なら」
 ひどい……。
 月璃(るり)さんは、海衣(かい)さんと離縁させられたら、居場所のない家に戻らないといけなくなるのに……。
「ない、です。私は、この国の王太子と結婚することになっていますし、私がただの王子と結婚したと知られたら、また全面戦争になるかもしれないですよね。そうなったら、私が黒宮に来た意味も、結明(ゆめ)さんが白神に行った意味もなくなってしまう……」
 つまらなそうな顔をしながら、海衣(かい)さんは、去っていく。
 ……遥流(はる)さまに、何か耳打ちをしてから。