明けない夜も、君のそばにいる。

「いよいよですね!菜花(さな)さま!」
「ちょっと、鈴恋(りこ)‼︎遊びに行くのとは訳が違うのよ?そんなに飛び跳ねないの!せっかくセットした髪が……」
「まあまあ、良いじゃないの、成律(なつ)
 あのパーティーの後、全く眠れなかった。
 どういうことなんだろう。
 私は、黒宮王国のことはよく知らないから、向こうで何があったのか、全くわからない。
 だから、力になれない気がする……。
「さっ、菜花(さな)さん!」
結明(ゆめ)さん……」
菜花(さな)さん、この前言ったこと、ずっと気にしているんですよね?すみません。あのことは、忘れても……」
「ねえ、黒宮王国って、どんなところなの?」
 結明(ゆめ)さんの言葉を遮って、そう聞く。
 もうすぐ、この家を出なければならないのだ。
「……普通ですよ。白神と変わらない。でも、白神のほうが、人が温かいと思います。菜花(さな)さんは、温かい家で育ったのですね」
 温かい……?
 私には、それがわからなかった。
遥流(はる)、王太子だけど、第二王子なんです。遥流(はる)の母親が正妃だったから、遥流(はる)より前に生まれた第一王子の海衣(かい)さんを差し置いて王太子になってしまって……。だから、王室で孤立しているんです」
 王太子だけど、第二王子……。
 そんなこともあるんだろう。
「正妃って……?」
「正妃というのは、王の妃の中で一番身分の高い妃のことです。妃は、王太子を産むと、王妃になれるのですが、正妃以外……側妃は、正妃が王子を産むと、その座から降りることになるんです」
 よくわからないが、妃の中で一番偉い人なんだろう。
「えっと、つまり……。第二王子なのに王太子になったのが気に食わない人がいる、ってこと……?」
「はい、そういうことです」
 白神は、正妃とかの制度はないから、最初に男の子を生んだ女御が、皇后になる。
 だから、二番目に生まれた人が皇太子になることはない。
 そう思えば、ここは幸せだなー。
遥流(はる)は、きっと最初は心を開いてくれないと思う。人を信じていないから。
でも、遥流(はる)に、寄り添ってあげて欲しい。そうすれば、きっといつか心を開いてくれるから。遥流(はる)、オムライス好きだから作ってあげて欲しい。あと、ハンバーグも好きだよ。ピーマンは苦手。それと……」
菜花(さな)さま、もう、行かないと……」
「そう、分かった。……結明(ゆめ)さん、私、うまくできるかわからないけれど、遥流(はる)さんの力になれるように、頑張るわね」
「よろしくお願いいたします……」
 結明(ゆめ)さんは、目に涙を浮かべて、お辞儀をした。
 良い子だな、と思う。
 この子なら、きっと大丈夫だ。


 さよなら、白神帝国。
 私は、もう二度とこの地を踏まないという覚悟で、この国を出た。