明けない夜も、君のそばにいる。

 白神帝国の皇后、御乃木(おんのき) 雪碧(ゆあ)
 私は、彼女の娘だった。
 小さい頃は、母上や周りの人たちに愛されていた。
 でも、私は第一皇女。
 妹たちの手本になる存在だった。
 私の一つ下の弟である皇太子、芹惺(せい)も、同じだった。
 私たちは、厳しい教育や躾に、ずっと一緒に耐えてきた、同士だ。
 それでも、その頃はまだ幸せだった。
 ……母上が、生きていた頃は。
 母上は、身分が高く、皇帝からも愛されていた。
 他の妃たちの敵だった。
 母上は、私たちの妹である、澪音(みと)を産んだ直後に亡くなった。
 その後が、地獄だった。
 母上の代わりに皇后になった、衿壁(えりかべ) 汐桜(しお)は、特に母上のことを嫌っていた。
 だから、私や芹惺(せい)澪音(みと)のことも毛嫌いしていた。
 澪音(みと)はまだ赤ちゃんだったから、御乃木家で育てられていたけれど、私と芹惺(せい)は違う。
 白神屋敷で暮らしていた。……汐桜(しお)皇后と同じ家で。
 汐桜(しお)皇后は、ずっと私たちに嫌がらせをしてきたし、皇太子である芹惺を無下に扱っていた。
 もちろん、そのことがバレた時には、父上……皇帝に怒られたらしいが…………。
 私は、この家が嫌いだった。
 蔵に閉じ込められたこともあるし、食事が用意されていなかったこともある。
 この家を早く出たい。
 私は、ずっとそう思っていた。
 だから、良いんじゃないか、と思う。
 この家を出ることができるのだから。

 黒宮王国の王太子、黒宮(くろみや) 遥流(はる)の妃になったら、この国からも出ることができるのだから。