夜が来なくなった。
木野葉とゲームセンターに寄った日19時になっても20時になっても外が暗くなることはなく太陽の位置は一定して沈みかけたまま暗くなることなく時間が過ぎていき巻き戻るようにして太陽が動き朝を迎えた。
世界はそれが当たり前かのように活動を始め夜が来ないことはなんら不思議なことではないとばかりに普通の朝が来た。
「おはよう」
電車に乗るべく歩く道で後ろから声をかけられる。
「ああ、おはよう」
聞き馴染んだ声の正体は木野葉で朝が似合う爽やかな笑顔でそこに立っていた。
「今日もどこかへ行こうか」
「どっか行きたいのか?」
「ちょっとね、神社へでも行ってお参りとかどうだい?」
「風情ある放課後だな」
いつも一緒に登校しているとでもいうような距離感で当たり前に会話が進み駅のホームへたどり着く。電車を待ちながら会話のなくなったら俺たちはふたりして前を見て電車が行き交うのを見守った。
電車内での会話もなく昨日の続きを読むべく本を取り出して栞へと指を滑らせる。
「その本、面白いかい?」
突如として始まった会話に目線を一度木野葉へ向けて本に戻す。
「面白いと思うところまで読んでいない。でも、続きを気にしているのは確かだ。」
「そうか、それは面白いということだな」
木野葉はそう呟いて窓の外を眺め始めた。それにつられるように栞を軸に本を開く。
活字が頭に入ってくるような入ってこないような同じ行を何回か読んでしまい時間のロスを感じている間に学校最寄りの駅がコールされる。
「卯助。降りようか」
本をしまい始める動作前。コンマの違いで声をかけられ、ああと返事をしたものの人の波に押され本をしまいきれず手に持ったまま木野葉と降りた。
そのままいつも通りのように学校へ向かい木野葉は隣の教室へ入っていった。
隣のやつだったのか、そんなふうに思いながら自分の席へ着けば目が痛いほどの輝きを放つ提灯をぶら下げた前園が既に座っていた。
冨岡さんが黒板を消していて、前の席の清水には羽が生えていた。
どんどんとおかしくなるこの世界に俺はいつまで置いてけぼりなのだろうか。普段はつつかない携帯を取り出して何の気なしにニュースを開けばトップに巨体隕石墜落の文字があった。数日前の寝ぼけた頭で見たニュースはまだ生きているらしい。
いや、もしかしてこの隕石が落ちたことでこの不可思議な現象が起こっているのではないか、そこまで考えたところで考えることをやめた。考えたところで導き出された答えは正解かどうかも答え合わせできないのだから無駄なのだ。
ロボットになった教員が教室へ入ってくる。教員は口から光を放ちテレビのような画面を掲示し説明し出す。
4時間目に体育。屋上へ行く日常を遂行するべく担任の話を適当に聞き流しながら、体操服の入ったカバンにイヤホンと小説を入れた。
屋上へはまだ木野葉の姿はなく。今朝開いたニュースを流しみる。隕石が落ちたのは1週間前の深夜3時。前触れもなく突然落ちたらしい。
どこから来たのかも分からず専門家は様々な見解を述べネット民はどこかから聞いた知識をあたかも自分の物のように書いている。でも誰も提灯が生えただとか、人が変わっただとか、ロボットと共存しているだとか言ってないのだ。
ネットを鵜呑みにしてはならないと言うが鵜呑みにもできないほど自分の置かれている状況が誰にも呟かれていないというのも怖いものがある。
古い鉄パイプを蹴る音がして音の方へ目線を向ければ木野葉が立っていた。
「卯助は、今をどう思っている?」
「満足しているよ」
「満足か、じゃあ今起きている現象はどう思っている?」
自分が持っている疑問が真正面から飛び込んできたとき、人間は固まるしかないのだなと思った。
自分からは聞かないように触れないようにと用心してきたのに無防備な状態でこちらへ飛び込んできたら太刀打ちできないことも今知ることとなった。
心臓疾患でもあったか疑うほどに早鐘を打つ心臓と喉など乾いてないのに喉が勝手に唾を飲み込む。手が震えるのを抑えるように無意識に握りしめてしまい身体に力が入っているのか声は中々出なかった。目の前の木野葉の外郭が歪む。目の前にいるのは本当に木野葉なのか。それさえも頭で考えるには少しばかり難しいことのようで無理やり捻り出した声は自分でも聞き取れるかどうかな小さな音だった。
「僕は問うているよ、卯助、君はどちらの人間だい?」
探られるより確信的に迫られる方が怖いなんて。呼吸が早まり汗が止まらない。どちら側かなんてこちら側に決まっている。俺はずっと変わらないのだから。
「木野葉。お前って」
「こちら側の人間だ。卯助はこちら側なのだな?」
「そうだよ。」
木野葉が少しづつ近づいてき、俺の肩に触れる。
「良かった」
木野葉の呼吸が近くに来て深く息を吐いたのが分かった。木野葉も緊張していたのだ。
「木野葉はいつから?」
「君と同じだよ、隕石が落ちたとニュースで見た日既に世界は歪んでいた。」
「やっぱり隕石なんだな」
なんとなくそうだと思っていたことが誰かから放たれるととても安心する。自分だけではない。そう思うと心が軽くなる。
「木野葉はあっち側に行ったらって怖くなることはない?」
「ないな、でも、卯助と出会った時この時間を歪ませてくれるなと神に祈ったよ」
「神か、俺たちはこのままでいられるかな」
「いられるさ、もともとこちら側にあっちが入り込んできたんだ。時間が来れば変化したように戻っていく。」
「それもそうだな。」
正体があやふやなまま関係を持っていた俺たちにこちら側という共通点があるだけでこんなにも心が晴れやかだとは。友達を作らず、変化を嫌った俺の初めての友達。
雲のない晴天を眺めながら木野葉が重ねた手に力を込めた。
時空が歪み、それらから起きるズレを気づかないようにと過ごして来た俺に木野葉という友達ができた。
家に帰れば姿のない母と言われるその人の冷えたご飯が置いてあり、起きれば同じように冷えたご飯が準備されておりそれを食べる。そんな俺の家が変わり始めていた。見たこともない廊下と外から見れば横に増築された様子にあの廊下の正体が増築された側へと向かう道だと結論ずかせた。
途端の変化に2度見こそしたがそちらへ向かうことはせず普通に過ごして家を出た。あの日から木野葉と学校へ向かっているが特別違和感はなく、人間の適応能力に驚かされるばかりだ。木野葉は朝、放課後に行く場所やすることを決めたがる。あそこへ行こうあれをしよう、ワクワクと話す様子が見ていて飽きないためその話を遮ることはしない。ただ、初めてが多すぎる様子に木野葉の過去を考えてしまう。細い身体と日焼けを知らない肌を見るになんとなくそうなのではないかと思わなくもないが見た目での決めつけはあまり好ましくないため聞けるタイミングを見計らっている状態だった。
「本屋へ行こうではないか」
「本屋か、」
「卯助がいつも買っている店が良い」
「分かった、電車に乗るけどいい?」
「構わない」
ニコニコと頬をほころばせる様子に自分まで放課後が楽しみになってくる。本屋へ行ってどう案内しようかそんなことを考えていれば学校はあっという間だった。
電車に乗って放課後。
いつになく浮かれ気味な木野葉を迷子にならないよう怪我しないようにと見張りながら本屋を目指す。
木野葉は見るもの全てに興味津々で繋いだ手をグイグイと興味のある方へ引いていく。その度に正しい道へと戻すのはいささか疲れた。
「ここが本屋か?」
「そうだよ、本屋では声のボリューム下げてね」
「分かっているよ」
いつもとは違う緊張感を持ちながら本屋へ入れば本や特有の匂いに肩の力が抜けた気がした。木野葉は初めての本屋にどう見たらいいのか分からない様子でこちらを見てくる。その様子が可愛くて自分の口元が緩んだことを気のせいだと思い木野葉に近づいた。
「何が見たいの?」
「卯助がいつも読んでいるやつ」
「文庫だね」
「そう、文庫文庫」
本の詰められた棚を何個か通り過ぎ文庫のコーナーへと歩けば木野葉は俺の袖の余白部分を指でつまみ付いてきた。この辺だよと棚の前まで案内すれば本の背を指で撫で気になったのか1冊抜き取り表紙を眺める。
「それ気になる?」
「これは長いこと人気の作品なんだね」
表紙の帯には増刷15刷り目の文字とベストセラーと殿堂入りの王冠マークまで書いてありここ5年位は人気の作品のことが伺えた。
「そうみたい、読む?」
「いや、少し懐かしく感じただけだ他を見よう」
懐かしくという表現に違和感を感じつつも丁寧に本を棚に戻すのを見守り興味がほかへ移ったのを感じて付いて行く。メディア化のコーナーへ立ち止まると感慨深そうに木野葉は呟く。
「ここでシリーズ1作目か」
「ここでって?」
「いや、長きに渡り愛される作品になるのではとね」
第1シリーズとも書かれていない何の変哲もない実写化にする感想としてはなんだかと思いつつも木野葉については知らない方が多い為結局のところ何も聞けずに本屋巡りが終わろうとしていた。
「卯助、ここから近い公園へ行こう」
出口に向かって歩く途中、またも突発的に発された言葉に返事が遅れる。
「、ああ、ここからだと10分程で行けるよ」
「じゃあそこに行こう」
本屋を振り返ることなく後にしてお互い無言で公園までの道を行く。太陽はいつものように停止中。
「ここだけど、何するんだ?」
「ここに名を書こう」
「ここにか?」
休憩スペースか木で作られたやぐらのようなものの1本の支柱に俺が頷くのを待たずして名前ペンで書き始める。どうにでもなれと木野葉楓の隣に鈴谷卯助と書き加えた。こんな名前書いて見つかったら一発で分かってしまう。いつもならしないことも木野葉が一緒だとつられてやってしまうという不思議に心が暖かかった。
「卯助にはいつか聞いて欲しいこともあるしこれは誓いだと思ってくれ」
「誓い?俺は別に約束くらいでも構わなかったけど」
「大事な事だからね、帰ろうか」
夕日が照らす木野葉の横顔は大層綺麗で消えそうな怖さを持っていた。帰ろうかと返事しながら木野葉の手をしっかりと握り駅へ向かう。木野葉も握り返したきてくれたことが安心へと繋がり、木野葉を見ていた目が前へ向くきっかけとなった。
木野葉とゲームセンターに寄った日19時になっても20時になっても外が暗くなることはなく太陽の位置は一定して沈みかけたまま暗くなることなく時間が過ぎていき巻き戻るようにして太陽が動き朝を迎えた。
世界はそれが当たり前かのように活動を始め夜が来ないことはなんら不思議なことではないとばかりに普通の朝が来た。
「おはよう」
電車に乗るべく歩く道で後ろから声をかけられる。
「ああ、おはよう」
聞き馴染んだ声の正体は木野葉で朝が似合う爽やかな笑顔でそこに立っていた。
「今日もどこかへ行こうか」
「どっか行きたいのか?」
「ちょっとね、神社へでも行ってお参りとかどうだい?」
「風情ある放課後だな」
いつも一緒に登校しているとでもいうような距離感で当たり前に会話が進み駅のホームへたどり着く。電車を待ちながら会話のなくなったら俺たちはふたりして前を見て電車が行き交うのを見守った。
電車内での会話もなく昨日の続きを読むべく本を取り出して栞へと指を滑らせる。
「その本、面白いかい?」
突如として始まった会話に目線を一度木野葉へ向けて本に戻す。
「面白いと思うところまで読んでいない。でも、続きを気にしているのは確かだ。」
「そうか、それは面白いということだな」
木野葉はそう呟いて窓の外を眺め始めた。それにつられるように栞を軸に本を開く。
活字が頭に入ってくるような入ってこないような同じ行を何回か読んでしまい時間のロスを感じている間に学校最寄りの駅がコールされる。
「卯助。降りようか」
本をしまい始める動作前。コンマの違いで声をかけられ、ああと返事をしたものの人の波に押され本をしまいきれず手に持ったまま木野葉と降りた。
そのままいつも通りのように学校へ向かい木野葉は隣の教室へ入っていった。
隣のやつだったのか、そんなふうに思いながら自分の席へ着けば目が痛いほどの輝きを放つ提灯をぶら下げた前園が既に座っていた。
冨岡さんが黒板を消していて、前の席の清水には羽が生えていた。
どんどんとおかしくなるこの世界に俺はいつまで置いてけぼりなのだろうか。普段はつつかない携帯を取り出して何の気なしにニュースを開けばトップに巨体隕石墜落の文字があった。数日前の寝ぼけた頭で見たニュースはまだ生きているらしい。
いや、もしかしてこの隕石が落ちたことでこの不可思議な現象が起こっているのではないか、そこまで考えたところで考えることをやめた。考えたところで導き出された答えは正解かどうかも答え合わせできないのだから無駄なのだ。
ロボットになった教員が教室へ入ってくる。教員は口から光を放ちテレビのような画面を掲示し説明し出す。
4時間目に体育。屋上へ行く日常を遂行するべく担任の話を適当に聞き流しながら、体操服の入ったカバンにイヤホンと小説を入れた。
屋上へはまだ木野葉の姿はなく。今朝開いたニュースを流しみる。隕石が落ちたのは1週間前の深夜3時。前触れもなく突然落ちたらしい。
どこから来たのかも分からず専門家は様々な見解を述べネット民はどこかから聞いた知識をあたかも自分の物のように書いている。でも誰も提灯が生えただとか、人が変わっただとか、ロボットと共存しているだとか言ってないのだ。
ネットを鵜呑みにしてはならないと言うが鵜呑みにもできないほど自分の置かれている状況が誰にも呟かれていないというのも怖いものがある。
古い鉄パイプを蹴る音がして音の方へ目線を向ければ木野葉が立っていた。
「卯助は、今をどう思っている?」
「満足しているよ」
「満足か、じゃあ今起きている現象はどう思っている?」
自分が持っている疑問が真正面から飛び込んできたとき、人間は固まるしかないのだなと思った。
自分からは聞かないように触れないようにと用心してきたのに無防備な状態でこちらへ飛び込んできたら太刀打ちできないことも今知ることとなった。
心臓疾患でもあったか疑うほどに早鐘を打つ心臓と喉など乾いてないのに喉が勝手に唾を飲み込む。手が震えるのを抑えるように無意識に握りしめてしまい身体に力が入っているのか声は中々出なかった。目の前の木野葉の外郭が歪む。目の前にいるのは本当に木野葉なのか。それさえも頭で考えるには少しばかり難しいことのようで無理やり捻り出した声は自分でも聞き取れるかどうかな小さな音だった。
「僕は問うているよ、卯助、君はどちらの人間だい?」
探られるより確信的に迫られる方が怖いなんて。呼吸が早まり汗が止まらない。どちら側かなんてこちら側に決まっている。俺はずっと変わらないのだから。
「木野葉。お前って」
「こちら側の人間だ。卯助はこちら側なのだな?」
「そうだよ。」
木野葉が少しづつ近づいてき、俺の肩に触れる。
「良かった」
木野葉の呼吸が近くに来て深く息を吐いたのが分かった。木野葉も緊張していたのだ。
「木野葉はいつから?」
「君と同じだよ、隕石が落ちたとニュースで見た日既に世界は歪んでいた。」
「やっぱり隕石なんだな」
なんとなくそうだと思っていたことが誰かから放たれるととても安心する。自分だけではない。そう思うと心が軽くなる。
「木野葉はあっち側に行ったらって怖くなることはない?」
「ないな、でも、卯助と出会った時この時間を歪ませてくれるなと神に祈ったよ」
「神か、俺たちはこのままでいられるかな」
「いられるさ、もともとこちら側にあっちが入り込んできたんだ。時間が来れば変化したように戻っていく。」
「それもそうだな。」
正体があやふやなまま関係を持っていた俺たちにこちら側という共通点があるだけでこんなにも心が晴れやかだとは。友達を作らず、変化を嫌った俺の初めての友達。
雲のない晴天を眺めながら木野葉が重ねた手に力を込めた。
時空が歪み、それらから起きるズレを気づかないようにと過ごして来た俺に木野葉という友達ができた。
家に帰れば姿のない母と言われるその人の冷えたご飯が置いてあり、起きれば同じように冷えたご飯が準備されておりそれを食べる。そんな俺の家が変わり始めていた。見たこともない廊下と外から見れば横に増築された様子にあの廊下の正体が増築された側へと向かう道だと結論ずかせた。
途端の変化に2度見こそしたがそちらへ向かうことはせず普通に過ごして家を出た。あの日から木野葉と学校へ向かっているが特別違和感はなく、人間の適応能力に驚かされるばかりだ。木野葉は朝、放課後に行く場所やすることを決めたがる。あそこへ行こうあれをしよう、ワクワクと話す様子が見ていて飽きないためその話を遮ることはしない。ただ、初めてが多すぎる様子に木野葉の過去を考えてしまう。細い身体と日焼けを知らない肌を見るになんとなくそうなのではないかと思わなくもないが見た目での決めつけはあまり好ましくないため聞けるタイミングを見計らっている状態だった。
「本屋へ行こうではないか」
「本屋か、」
「卯助がいつも買っている店が良い」
「分かった、電車に乗るけどいい?」
「構わない」
ニコニコと頬をほころばせる様子に自分まで放課後が楽しみになってくる。本屋へ行ってどう案内しようかそんなことを考えていれば学校はあっという間だった。
電車に乗って放課後。
いつになく浮かれ気味な木野葉を迷子にならないよう怪我しないようにと見張りながら本屋を目指す。
木野葉は見るもの全てに興味津々で繋いだ手をグイグイと興味のある方へ引いていく。その度に正しい道へと戻すのはいささか疲れた。
「ここが本屋か?」
「そうだよ、本屋では声のボリューム下げてね」
「分かっているよ」
いつもとは違う緊張感を持ちながら本屋へ入れば本や特有の匂いに肩の力が抜けた気がした。木野葉は初めての本屋にどう見たらいいのか分からない様子でこちらを見てくる。その様子が可愛くて自分の口元が緩んだことを気のせいだと思い木野葉に近づいた。
「何が見たいの?」
「卯助がいつも読んでいるやつ」
「文庫だね」
「そう、文庫文庫」
本の詰められた棚を何個か通り過ぎ文庫のコーナーへと歩けば木野葉は俺の袖の余白部分を指でつまみ付いてきた。この辺だよと棚の前まで案内すれば本の背を指で撫で気になったのか1冊抜き取り表紙を眺める。
「それ気になる?」
「これは長いこと人気の作品なんだね」
表紙の帯には増刷15刷り目の文字とベストセラーと殿堂入りの王冠マークまで書いてありここ5年位は人気の作品のことが伺えた。
「そうみたい、読む?」
「いや、少し懐かしく感じただけだ他を見よう」
懐かしくという表現に違和感を感じつつも丁寧に本を棚に戻すのを見守り興味がほかへ移ったのを感じて付いて行く。メディア化のコーナーへ立ち止まると感慨深そうに木野葉は呟く。
「ここでシリーズ1作目か」
「ここでって?」
「いや、長きに渡り愛される作品になるのではとね」
第1シリーズとも書かれていない何の変哲もない実写化にする感想としてはなんだかと思いつつも木野葉については知らない方が多い為結局のところ何も聞けずに本屋巡りが終わろうとしていた。
「卯助、ここから近い公園へ行こう」
出口に向かって歩く途中、またも突発的に発された言葉に返事が遅れる。
「、ああ、ここからだと10分程で行けるよ」
「じゃあそこに行こう」
本屋を振り返ることなく後にしてお互い無言で公園までの道を行く。太陽はいつものように停止中。
「ここだけど、何するんだ?」
「ここに名を書こう」
「ここにか?」
休憩スペースか木で作られたやぐらのようなものの1本の支柱に俺が頷くのを待たずして名前ペンで書き始める。どうにでもなれと木野葉楓の隣に鈴谷卯助と書き加えた。こんな名前書いて見つかったら一発で分かってしまう。いつもならしないことも木野葉が一緒だとつられてやってしまうという不思議に心が暖かかった。
「卯助にはいつか聞いて欲しいこともあるしこれは誓いだと思ってくれ」
「誓い?俺は別に約束くらいでも構わなかったけど」
「大事な事だからね、帰ろうか」
夕日が照らす木野葉の横顔は大層綺麗で消えそうな怖さを持っていた。帰ろうかと返事しながら木野葉の手をしっかりと握り駅へ向かう。木野葉も握り返したきてくれたことが安心へと繋がり、木野葉を見ていた目が前へ向くきっかけとなった。
