アネモネ記念日

◇◇
「あ。碧おはよう!今日は朝礼があるんだよ?忘れたの?」
「おはよう。忘れたってわけじゃないけど、ちょっとのんびり来たってだけ」
 私に声をかけてくれたのは、小学校からの大親友である相澤百華(あいざわももか)
 マイペースなところはあるが、運動神経が良く、このクラスの中で唯一話していて楽しいと思える友人だ。
 担いでいた重りを机の横にかけ、少し味が出てきた体育館履きに履き替える。
 中学校に入学してから半年も経ち、この生活に慣れてきた。
 だからこそ、だ。新鮮さが失われ、刺激がなくなる。
 三年間の学校生活の最終目標はただ一つ。
 高校受験。
 未来への第一歩、今のうちから取り組んで損はない、未来の自分が感謝することになる。
 今後のため。将来への投資。大人になったとき後悔しないように。
 そんなのどうでもいいのだ。
 私は今を生きているというのに、なぜ未来のために努力をしなければいけないのか。
 未来の自分のために、目の前にある楽しさを手放し、今の自分が苦しむ。
 何があるかわからないというのに、不確定なことのために努力して、もし何もなければどうするつもりなのだろうか。
 散々言ってきた大人たちは、責任を取ってくれるのだろうか。
 否。
 努力不足、こうすればよかったのに。
 けじめをつけられないくせに、あれこれ口出ししてくる。
 余計なお世話なのだ。
「あーおいっ!そろそろ並ぶってさ。行こう?」
 一点だけを見つめていた私を見かねたのか、百華が話しかけてくれた。
「うん。教えてくれてありがとう」
 そう言って早歩きで廊下に向かう友人を見て、心の中で感謝をした。
 そして、またこれから始まる憂鬱な予定のことを思い出して、ため息をついたのだった。