「美味いんじゃ!」

放課後、代山は怒りながら栗のパフェを食べていた。
津内さんもぷんぷん怒りつつ、モンブランを食べて頬を押さえている。
食べ物効果は偉大だ。魁はメロンソーダを飲みながら、スマホを手に取った。
「ほら。仲直りの記念に写真撮ろう」
「はぁ? 子どもじゃないんだし」
「黙れ。はい、チーズ」
騒ぐ代山の靴を蹴り、強引に二人の写真を撮った。
「今送ったよ」
「……ありがとう」
津内さんはわずかに頬を赤らめ、スマホの画面を見つめた。
代山も最初こそブーブー言っていたが、最終的にまんざらでもない顔でスマホの写真を眺めた。

「そもそも、俺を仲間外れにしたのが悪い」
「マジでこの勘違い病的じゃない? 凪原君」

これもいつものやり取りだ。何だかんだ、彼らは相性が良いと思う。
「俺も悪かった。ごめんな、代山」
「凪原君が謝ることないのに!」
津内さんは驚いているけど、代山は微笑み、前髪をさらっと流した。その仕草は確かにキモかった。
「もういいって。わかればいいんだ」
「モラハラ夫みたいな台詞マジキモい」
「津内っお前さっきからキモい言い過ぎだぞ! 俺だって傷つくんだからな!」
あぁ……また始まった……。
終わりなき口論に気が遠くなったが、代山は思い出したようにテーブルに手をついた。

「そういえば! 凪原、卒アルどうだった? 結局誰搜してたの!?」

彼は俺の前にグイグイ迫ってくる。津内さんと違い、直球で訊いてくるところが……裏表のない彼の長所なんだろう。
津内さんは少しハラハラしていたけど、やはり聞きたそうに見えた。
理には、鏡にいることを誰にも言うなと言われた。だから申し訳ないけど、彼のことは伏せることにした。
「捜してる男の子がいるんだ。現状、顔しかわからないんだけど」
「あ。もしかして、アルバムで捜してた?」
頷くと、二人は顔を見合わせた。
「凪原君は、その子とどういう繋がりなの?」
「え。ええと……! 転校初日、迷って空き教室に行ったら、写真が教卓の上に置いてあったんだよ」
かなり無理やりだけど、これしか思いつかなかった。目が泳ぎそうになるのを抑えながら、深く息を吸う。
「次に行ったときはなくなってたけど、何か気になっちゃって。この学校にいるなら会ってみたいと思ったんだ」
でも学校の中で見かけないから、卒業生かもしれないと続けた。
代山は最後のひと口を食べ、頬杖をついた。
「でもさ、この学校の奴とは限らなくね?」
「いや、絶対そう。だってこの学校の制服着てたから」
津内さんも不思議そうに腕を組み、う〜んと呻く。
こんな話に巻き込んでしまってるのも申し訳なくて、また頭を下げた。
「ごめん。俺の意地っていうか、我儘なんだ。忘れて」
「水くさいなー。面白そうだし、俺らも協力するよ! 絶対そいつ見つけてやろうぜ!」
「そうだよ! 何か探偵みたいで楽しそう!」
「ええ……」
意外なことに、彼らはノリノリで身を乗り出した。
俺は理に会ってるけど、彼を知らない二人が進路前に精を出すことじゃない。だからそこまでしなくて大丈夫と止めたが、むしろ火がついてしまったようだ。代山も津内さんも、何が何でも見つけようとスマホをいじっている。

「この学校の名前入れて、SNSで調べたら見つかるんじゃね」
「うーん、でも私達は顔知らないから、凪原君に見てもらうしかないね」
「あ、あぁ。だからそれは大丈夫。誰かが悪ふざけで作ったものかもしれないし」

慌てて言うと、代山は手で制した。
「それなら、その写真を作った奴を突き止めて、何が目的で置いたか問い詰めなきゃ! 気になって夜も眠れないんだろ?」
「眠れてるよ」
「それは恋だ!」
おかしいな。日本語が通じない。
視線を手元に落とすと、津内さんが困ったように笑った。
「落ち着きなよ。男の子でしょ」
「あ、そうか」
暴走する代山に呆れながら、彼女は俺の方に向いた。
「私達も、多分最後に何かしたいんだよ。何の意味もなかったとしてもさ……取り組んだ時間とか、楽しめたかどうか。過程の方が大事だと思う!」

彼女は片手を握り、俺の目を見据えた。
「たから無駄なんかじゃないよ。友達がしたいことに協力するのは!」
「……」
……そうか。
確かに、そうなのかもしれない。

俺も、代山や津内さんが「やりたい」と言ったことなら全力で協力したいから。その目的や結果なんて、どうでもいいんだ。

「二人とも、ありがとう」

友達って、やっぱりでかいな。
心の、頭の、魂の大部分を占める。高校生にとっての“友達”は、それほど大きな存在だ。
彼らは一瞬固まり、何故か照れくさそうに話した。

「凪原はアレだよな。クッソ人たらし」
「そうだね。前から思ってたけど、凪原君の笑顔ってかなり危険……っていうか、罪」
「何で!?」

そして最後は謎の批判を受け、理の捜索会議は終了した。