第19話【アレス編】『魔王城のドロップ率、低すぎませんか?』カニ歩き勇者、ツボを割りタンスを荒らす
「……魔王様、報告に上がりました」
魔王城執務室。そこでは、魔王軍〝管理部長〟のカペラが、額に青筋を立てていた。
「……現在、城内で〝全てのツボが粉砕され、タンスの中身が執拗に荒らされる〟という、低級な野盗の如き事件が多発しております」
「また、アレスか……」
カペラは、全ての物資を1ミリの狂いもなく管理する〝整頓の魔族〟だが、今の彼女の前では、その完璧な秩序が〝勇者の習性〟によってズタズタにされていた。
「……魔王様。あの男、アレスを処分……〝棚卸し〟してきてもよろしいでしょうか。彼が通った後の部屋が、まるでサイクロンが直撃した後のようです」
その時、執務室のドアが〝カニ歩き〟でスライドしてきたアレスによって開けられた。足元に転がっていた観賞用の巨大なツボの前に跪き、ガサゴソと中を漁り始める。
「おかしいな……このサイズのツボなら、普通は〝やくそう〟か、せめて〝金貨3枚〟くらいは入っているはずなのに……空っぽだ」
『……あんた、それ100万するアンティークよ』
「魔王様、この城、ドロップ率が低すぎませんか?」
腰のサタンブレイドが呆れるが、カペラの怒りは沸点に達していた。
「……私の管理する美しい調度品を、汚い手でベタベタと……。この城に不必要な〝無駄な挙動〟は許しません!」
「……ない。ここにもない。この棚の配置、怪しいと思ったんだがな……」
アレスは壁一面に並んだ本棚の前で、一冊一冊の本をバサバサッと音を立てて抜き、床に放り投げていた。
「おかしいな……。これだけ本があれば、一冊くらいは〝読むだけで賢さが上がる本〟か、隠しスイッチが反応する〝偽装本〟があるはずなのに……」
「本を投げるなと言っているでしょう!」
「カペラさん、甘いですよ。本棚の隅々まで調べ尽くすのは勇者の基本です。ほら、この本だけ少し色が……」
『……あんた、それカペラが何年もかけて集めた本よ。いい加減にしなさい』
サタンブレイドの忠告も空しく、カペラはアレスの奇行を指差して叫ぶ。
「何ですかその足元は!また〝壁伝い〟でカニ歩きをして!」
「これはカニ歩きじゃない!通路の角に潜む〝不意打ち(バックアタック)〟を警戒する、タクティカル・ムーブメントです!……おっ、この石像、動くぞ!」
「ギャーッ!!私が美しく見えるよう計算して置いた石像が!何をしているんですか、それを動かしてどうするつもりです!?」
「決まってるじゃないですか!こういう不自然な像を、床の紋章の上に置くと、宝箱が出現するか、隣の部屋の封印が解けるんです!さあ、動け……動けぇぇ!」
『……ただのインテリアだって。カペラが泣いてるからやめなさい』
アレスの暴走により執務室は〝読みかけの本〟と〝動かされた石像〟で埋め尽くされ、〝整頓の魔族〟カペラはブクブクと泡を吹いて倒れた。
こめかみに青筋を立てた魔王が、呆れながら言い放った。
「……アレス!その本を置いて今すぐ出ていけ!さもなくば、お前を隣の倉庫の〝ミミック〟の中に一晩閉じ込めるぞ!」
「ミミック!?レアドロップのチャンスじゃないですか!!行ってきます!!」
アレスは狂喜乱舞しながら、再び壁伝いのカニ歩きで倉庫へと消えていった。
「(……勇者の〝習性〟は魔王をも上回る不条理というわけか……)」
魔王は深く溜息をつき、アレスが〝隠しアイテム〟と勘違いして持ち去ろうとした〝魔王の就寝用ナイトキャップ〟を取り戻すべく、重い腰を上げるのだった。
「……魔王様、報告に上がりました」
魔王城執務室。そこでは、魔王軍〝管理部長〟のカペラが、額に青筋を立てていた。
「……現在、城内で〝全てのツボが粉砕され、タンスの中身が執拗に荒らされる〟という、低級な野盗の如き事件が多発しております」
「また、アレスか……」
カペラは、全ての物資を1ミリの狂いもなく管理する〝整頓の魔族〟だが、今の彼女の前では、その完璧な秩序が〝勇者の習性〟によってズタズタにされていた。
「……魔王様。あの男、アレスを処分……〝棚卸し〟してきてもよろしいでしょうか。彼が通った後の部屋が、まるでサイクロンが直撃した後のようです」
その時、執務室のドアが〝カニ歩き〟でスライドしてきたアレスによって開けられた。足元に転がっていた観賞用の巨大なツボの前に跪き、ガサゴソと中を漁り始める。
「おかしいな……このサイズのツボなら、普通は〝やくそう〟か、せめて〝金貨3枚〟くらいは入っているはずなのに……空っぽだ」
『……あんた、それ100万するアンティークよ』
「魔王様、この城、ドロップ率が低すぎませんか?」
腰のサタンブレイドが呆れるが、カペラの怒りは沸点に達していた。
「……私の管理する美しい調度品を、汚い手でベタベタと……。この城に不必要な〝無駄な挙動〟は許しません!」
「……ない。ここにもない。この棚の配置、怪しいと思ったんだがな……」
アレスは壁一面に並んだ本棚の前で、一冊一冊の本をバサバサッと音を立てて抜き、床に放り投げていた。
「おかしいな……。これだけ本があれば、一冊くらいは〝読むだけで賢さが上がる本〟か、隠しスイッチが反応する〝偽装本〟があるはずなのに……」
「本を投げるなと言っているでしょう!」
「カペラさん、甘いですよ。本棚の隅々まで調べ尽くすのは勇者の基本です。ほら、この本だけ少し色が……」
『……あんた、それカペラが何年もかけて集めた本よ。いい加減にしなさい』
サタンブレイドの忠告も空しく、カペラはアレスの奇行を指差して叫ぶ。
「何ですかその足元は!また〝壁伝い〟でカニ歩きをして!」
「これはカニ歩きじゃない!通路の角に潜む〝不意打ち(バックアタック)〟を警戒する、タクティカル・ムーブメントです!……おっ、この石像、動くぞ!」
「ギャーッ!!私が美しく見えるよう計算して置いた石像が!何をしているんですか、それを動かしてどうするつもりです!?」
「決まってるじゃないですか!こういう不自然な像を、床の紋章の上に置くと、宝箱が出現するか、隣の部屋の封印が解けるんです!さあ、動け……動けぇぇ!」
『……ただのインテリアだって。カペラが泣いてるからやめなさい』
アレスの暴走により執務室は〝読みかけの本〟と〝動かされた石像〟で埋め尽くされ、〝整頓の魔族〟カペラはブクブクと泡を吹いて倒れた。
こめかみに青筋を立てた魔王が、呆れながら言い放った。
「……アレス!その本を置いて今すぐ出ていけ!さもなくば、お前を隣の倉庫の〝ミミック〟の中に一晩閉じ込めるぞ!」
「ミミック!?レアドロップのチャンスじゃないですか!!行ってきます!!」
アレスは狂喜乱舞しながら、再び壁伝いのカニ歩きで倉庫へと消えていった。
「(……勇者の〝習性〟は魔王をも上回る不条理というわけか……)」
魔王は深く溜息をつき、アレスが〝隠しアイテム〟と勘違いして持ち去ろうとした〝魔王の就寝用ナイトキャップ〟を取り戻すべく、重い腰を上げるのだった。
